外国人登録法第一八条第一項第八号前段の罪は、同法第一四条第一項所定の各申請をする者が、その申請に際し登録原票等に指紋を押なつしなかつたときは直ちに成立し、その後になつて指紋を押なつしても、同罪の成立に何らの影響を及ぼすものではない
外国人登録法第一八条第一項第八号前段の罪の成立時期
外国人登録法14条1項,外国人登録法14条2項,外国人登録法11条1項,外国人登録法18条1項8号
判旨
外国人登録法14条1項に規定する指紋押捺制度は、在留外国人の公正な管理という行政目的のために必要かつ合理的であり、日本国憲法13条等の基本的人権を不当に侵害するものではない。
問題の所在(論点)
外国人登録法14条1項(当時)の指紋押捺義務が、在留外国人の基本的人権(憲法13条のプライバシー権等)を不当に侵害し、違憲とならないか。
規範
外国人の指紋押捺義務については、その目的が外国人登録制度の正確性を期し、在留外国人の公正な管理を図るという合理的な行政上の必要性に基づくものである限り、相当な限度において許容される。具体的には、プライバシー権等の憲法上の要請とのバランスを考慮し、手段の必要性・合理性が認められるか否かによって判断すべきである。
重要事実
被告人は、日本に在留する外国人であったが、外国人登録法14条1項の規定に基づく指紋の押捺を拒否した。これにより、同法18条1項8号(当時の規定)の指紋押捺義務違反に問われ、起訴された。被告人側は、指紋押捺の強制は憲法13条(プライバシー権・個人の尊厳)等に違反し、基本的人権を侵害するものであると主張して争った。
あてはめ
判決文には詳細なあてはめ過程の記述はないが、原審が「外国人登録法14条1項及び18条1項8号の解釈につき原審のした判断は正当である」としたことを支持している。これは、同制度が外国人管理の適正確保という合理的目的を有し、社会的に相当な範囲内の制約であると判断したものと解される。被告人が主張する違憲性の抗弁については、単なる法令違反や事実誤認の主張に過ぎないと退けられた。
結論
外国人登録法上の指紋押捺義務は合憲であり、これを拒否した行為に対し刑罰を科すことは適法である。
実務上の射程
本判決は、在留外国人の管理という行政上の目的が、プライバシー権等の人権制約を正当化し得ることを示した初期の重要判例である。司法試験においては、外国人に対する人権保障の範囲(マクリーン事件等と併せて検討)や、行政目的のためのプライバシー制約の合理性を論ずる際の基準として参照されるが、現在の外国人登録制度が廃止され、在留カード制度へ移行している点には注意が必要である。
事件番号: 平成6(あ)687 / 裁判年月日: 平成9年11月17日 / 結論: 棄却
外国人登録原票の登録事項の確認制度を定めた外国人登録法一八条一項一号(平成四年法律第六六号による改正前のもの)、一一条一項(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)は、憲法一三条、一四条に違反しない。
事件番号: 昭和32(あ)258 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
外国人の登録証明書携帯義務を規定した外国人登録法一三条一項の規定が憲法一四条に違反するものでないことは、昭和二六年(あ)第三九一一号同三〇年一二月一四日大法廷判決(刑集九巻一三号二七五六頁参照)の趣旨に徴し明らかである。