飲食店の経営者が、店内において客から依頼されてその嗜好に応ずるため、自ら無免許で製造した清酒(五勺)と市販の焼酎(五勺)とを調和混合して(合計一合)提供する行為は、酒類の製造にあたらない
飲食店の経営者が客の求めに応じ、自ら無免許で製造した酒類に他の酒類を混和する行為は、酒類の製造にあたるか
酒税法43条,酒税法56条3項,酒税法54条,酒税法施行令32条
判旨
飲食店において、客の求めに応じ、消費の直前で自ら製造した清酒と市販の焼酎を混和して提供する行為は、酒税法43条6項及び同法施行令32条に規定する「消費の直前における混和」に該当し、酒類の製造には当たらない。
問題の所在(論点)
飲食店において、客の求めに応じて自作の清酒と市販の焼酎を混ぜて提供する行為が、酒税法上の「酒類の製造」に該当し、無免許製造として処罰されるか。特に、酒税法43条6項の「消費の直前における混和」の例外規定の適否が問題となる。
規範
酒税法43条6項及び同法施行令32条によれば、酒場や料理店等の営業者が、その営業場において消費者の求めに応じ、消費の直前において酒類に他の物品(酒類を含む)を混和する場合は、同法43条1項から5項までの規定(みなし製造規定等)は適用されない。ただし、混和される酒類が、製造者が不明等の理由により法56条3項に基づき酒税を徴収されるべき酒類である場合はこの限りではない。
重要事実
飲食店を経営する被告人は、来店した2人の客から依頼を受け、その客の嗜好に応じるため、その場で客の求められるままに、自ら製造した清酒(5勺)と市販の焼酎(5勺)を調和混合して合計1合を提供した。原審は、この行為を雑酒1合の製造に当たると判断したが、被告人は酒税法上の例外規定の適用を主張して争った。
あてはめ
本件における調和混合は、被告人の経営する飲食店において、客の求めに応じてその場で行われたものであり、「消費の直前における混和」に該当する。また、混和に用いられた清酒は被告人が自ら製造したものであって製造者が判明しているため、酒税法56条3項の「酒税を徴収されるべき酒類(製造者不明等)」には当たらない。したがって、本件行為は酒税法43条6項及び施行令32条の要件をすべて充足する。
結論
被告人の行為は、酒税法上の酒類の製造には当たらない。したがって、本件事実について被告人は無罪である。
実務上の射程
酒税法上の「製造」の概念に関する射程を示す。営業上のサービスとして行われる即席の混和(カクテル調製等)が、形式的にみなし製造規定(同法43条1項等)に触れる場合であっても、同条6項の例外要件を満たせば処罰されないことを明示した事例である。
事件番号: 昭和25(れ)953 / 裁判年月日: 昭和25年9月28日 / 結論: 棄却
酒税法第五條に「本條に於て合成清酒とはアルコール、焼酒又は清酒と他の物品とを混和して製造したる酒類にして其の香味、色澤其の他の性状が清酒に類似するものを謂う」とあるのは、既成のアルコール焼酒又は清酒と他の物品とを混和して製造する過程中に他の物品と混和して製造するとを問わないものと解するを相當とする。