本件ビルマ粳精米のごとく、水洗、再搗精の上高熱処理する菓子(例、おこし、せんべい、掛物等)の製造原料に供せられうる米穀は、それがいわゆる黄変米として農林大臣より主食として配給することが不適当と認められたとしても、これをもつて直ちに食糧管理法の適用より除外されるべきものと認むべき根拠とはならない
いわゆる黄変米と食糧管理法の適用
食糧管理法2条
判旨
食糧管理法2条所定の「米穀」に該当するか否かは、主食としての配給に適するかという性質のみならず、行政上の割当目的や管理体制等の実態に基づいて判断される。黄変米であっても、特定の加工用原料として売却され、流用防止等の指導監督下にある場合は、同法上の「米穀」に該当する。
問題の所在(論点)
主食として不適当とされる黄変米が、食糧管理法2条(旧法)にいう「米穀」に該当し、同法の規制対象となるか。
規範
食糧管理法(旧法)の適用対象となる「米穀」に該当するか否かは、当該物品の客観的な性質(主食適格性)のみによって決まるものではない。農林大臣の通達に基づく割当や、特定の販売・消費目的(菓子製造原料用等)に従って政府から払い下げられ、行政上の監督・流用禁止措置が講じられている実態がある場合には、依然として同法の管理対象たる「米穀」に該当する。
重要事実
被告人らは、輸入されたビルマ米(黄変米)を菓子製造原料として政府から払い下げを受けた。このビルマ米は、高熱処理を要する菓子の原料に限定して割り当てられ、水洗・再搗精・加熱の徹底が周知されていた。また、通達により、知事は他用途への流用や転売を禁止し、十分な監督・指導を行うべきことが明記されていた。被告人側は、当該米が主食配給に不適当な黄変米であり食糧管理法の対象外であると主張して争った。
事件番号: 昭和32(あ)979 / 裁判年月日: 昭和34年5月7日 / 結論: 棄却
一 本件ビルマ米が所論のごとく食糧管理法第四条第一項後段による払下でなく、所論通達に基く払下であるとしても、これをもつて食糧管理法の統制の枠外に置かれて自由な取引を許容されるものと解することはできない。 二 註、通達=昭和二五年四月一三日付食糧庁長官発二五食糧第三〇二三号「政府及食糧公団所有綜合配給不適格食糧の処理に関…
あてはめ
本件ビルマ米は、食糧庁長官の通達に基づき、知事が指定する菓子製造業者に対して「菓子製造原料用」として売却されたものである。通達上、高熱処理を前提とした限定的な用途に供されるべきものとされ、かつ他用途への流用・転売禁止といった厳格な行政管理下にある。このように、政府が特定の販売・消費目的をもって払い下げ、法による管理体制が維持されている以上、主食としての配給に不適当な性質を有していても、直ちに同法の適用から除外されるものではない。したがって、本件ビルマ米は同法2条所定の米穀に該当するといえる。
結論
本件ビルマ米は食糧管理法2条所定の「米穀」に該当する。上告棄却。
実務上の射程
行政上の規制対象物の範囲が問題となる事案において、その「物の性質」だけでなく「行政上の管理実態・目的」を重視して範囲を決定する判断手法を示している。現代の経済法規や行政法規における「対象物の定義」の解釈においても、管理の必要性や制度趣旨に照らして判断する際の参考となる。
事件番号: 昭和30(あ)3132 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 棄却
いやしくも米穀の形態をそなえ、食糧に供することができるものである限り、食糧管理法二条にいう主要食糧たる米穀に該当し、その品質等級の如何を問わないものであること当裁判所の判例に徴し明らかである。(昭和三〇年(あ)第一九六九号、同三二年七月三〇日第三小法廷決定)