法律により犯罪者に対し自由刑の一種として禁錮刑を定めることは憲法第二七条第一項に牴触するものではない。
禁錮刑と憲法第二七条第一項。
憲法27条1項,刑法13条,監獄法26条
判旨
憲法27条1項は一般国民に勤労の権利義務を保障した規定であるが、刑罰として自由刑を科し権利を制限することは許容されており、禁錮刑は同条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法が定める自由刑の一種である禁錮刑が、勤労の権利及び義務を規定する憲法27条1項に違反するか否か。
規範
憲法27条1項は、一般国民に対して勤労の権利と義務を保障した規定である。もっとも、犯罪による刑罰として犯罪者に対し自由刑を科し、一般国民としての権利自由を制限し得ることは当然のことである。したがって、法律により犯罪者に対し自由刑の一種として禁錮刑を定めることは、同項に抵触するものではない。
重要事実
被告人に対し、禁錮刑を科した原判決が言い渡された。これに対し弁護人は、禁錮刑は受刑者を監獄に留置するだけで労働に従事させるものではなく、国家が糧食を給して無為徒食させる制度であるから、勤労の義務を定める憲法27条1項に違反し、違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和40(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和41年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に反する場合であっても、そのこと自体は判決に影響を及ぼすものではないため、これを理由に判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原裁判所(控訴審)の審理が憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」の要請に反するものであると主張した。具体的に…
あてはめ
禁錮刑は、受刑者を監獄に拘置してその自由を制限し、監獄法その他の法規に定める厳格な規律の下に生活させるものである。また、本人が希望すれば作業にも就かせることができるため、一方的に無為徒食を強いる制度ではない。刑罰権の行使に伴う権利制限の範疇として、このような禁錮刑を法律で定めることは、勤労の義務等の趣旨を逸脱するものではなく、許容される制約といえる。
結論
禁錮刑は憲法27条1項に違反しない。したがって、被告人に禁錮刑を科した原判決に違憲の違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事罰による基本権制限の合憲性を肯定する際、憲法27条という特殊な条文との関係を整理する文脈で使用される。自由刑そのものの合憲性を支える包括的な論理として位置づけられる。
事件番号: 昭和34(あ)1540 / 裁判年月日: 昭和35年3月3日 / 結論: 棄却
道路において演説をなし人寄をする場合を許可制とした道路交通取締法第二六条第一項第四号、第二九条第一号、同法施行令第六九条第一項および昭和二九年北海道公安委員会規則第一二号道路交通取締法施行細則第二六条第八号の各規程は、憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 昭和34(あ)1267 / 裁判年月日: 昭和37年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】交通事故の運転者に対する被害者の救護義務(道路交通法72条1項前段参照)は、刑事責任の追及を目的とする供述の強要とは無関係であり、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は自動車の運転中に交通事故を起こしたが、被害者の救護措置を講じなかった。この点について、当時の道路交通取締法施行令…
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
事件番号: 昭和51(あ)882 / 裁判年月日: 昭和51年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項後段及び119条1項10号の規定は、憲法38条1項に違反しない。交通事故における警察官等への報告義務は、自己に不利益な供述を強要するものではないとする判例の趣旨が改めて確認された。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反等に問われ、同法72条1項後段(警察官等への報告義務)及…