一 日本専売公社の製造にかかる製造たばこ「光」の外箱は、刑法第一五五条第一項にいう「公務所ノ作ル可キ図画」にあたる 二 たばこ専売法第六五条の二、第七一条第一号と刑法第一五五条第一項とは、両者の併存適用を妨げない
一 製造たばこ「光」の外箱の偽造と刑法第一五五条第一項の適用 二 たばこ専売法第六五条の二、第七一条第一号と刑法第一五五条第一項との適用関係
刑法7条,刑法155条1項,たばこ専売法65条の2,たばこ専売法71条1号,日本専売公社法2条,日本専売公社法7条,日本専売公社法18条1項
判旨
日本専売公社が発行した製造たばこの外箱は、合法的な専売品であることを証明する意思を表示した図画として刑法155条1項の公文書に該当する。また、たばこ専売法と刑法155条は保護法益と処罰対象が異なるため、両規定の適用は併存し、特別法による排他的適用は否定される。
問題の所在(論点)
1. 日本専売公社の名称等が印刷されたたばこの外箱が、刑法155条1項の「公務所若しくは公務員が作成すべき文書若しくは図画」に該当するか。 2. たばこ専売法に偽造品に関する罰則がある場合、刑法155条の適用は排斥されるか。
規範
刑法155条1項の「図画」とは、文字以外の記号等によって特定の事実を証明する意思が表示されたものを指す。公文書偽造罪は公文書の真正に対する公の信用を保護するものであり、他の行政法規(たばこ専売法等)が特定の取締目的を持っていても、法益及び処罰対象の範囲が異なる限り、刑法の適用は妨げられない。
重要事実
被告人らは、共謀の上、真正な製造たばこ「光」の外箱と同様の図柄、および「日本専売公社」なる文字、その他所要の事項を印刷して、偽造したたばこの外箱を製造した。弁護人は、当該外箱は美術的効果を有するに過ぎず刑法上の「図画」に当たらないこと、また、たばこ専売法に罰則規定がある以上、刑法155条は適用されないことを主張して上告した。
事件番号: 昭和34(あ)1811 / 裁判年月日: 昭和35年3月10日 / 結論: 棄却
物品税表示証紙は刑法第一五五条第三項の公文書にあたるものと解するのが相当である。
あてはめ
本件たばこの外箱は、単なる美術的な意匠にとどまらず、日本専売公社が製造した合法的専売品であることを外部に証明する意思が表示された図画であると認められる。また、たばこ専売法71条1号等の規定は、専売制度の維持・取締を目的とするものであり、公文書の真正に対する社会的信用を保護する刑法155条とはその目的および対象を異にする。したがって、特別法があることをもって刑法の適用がないと解することはできない。
結論
本件たばこの外箱は刑法155条1項の図画に該当し、被告人らには公文書偽造罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、外箱という動産に付随する表示であっても、作成名義人が公務所等であり、証明機能を有する限り「公文書(図画)」になり得ることを示している。答案上は、郵便切手や収入印紙といった特定の証票(刑法162条等)とは異なり、一般的な証明機能を有する公務所作成の表示は刑法155条で処理されるべきとする構成の根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)4126 / 裁判年月日: 昭和32年6月8日 / 結論: 棄却
一 商品のラベルに押捺された物品税表示証の表示(検印)は、刑法第一六六条にいう公務所の記号にあたる。 二 右表示(検印)の偽造も模造もともに真正の検印を模擬するものであるが、その模擬の程度が通常人をして真正のものであるという印象を与える程度のものであるときは偽造であり、その程度に至らないときは模造であると解すべきである…
事件番号: 昭和59(あ)555 / 裁判年月日: 昭和61年6月27日 / 結論: 棄却
行使の目的をもつて、ほしいままに、営林署長の記名押印がある売買契約書の売買代金欄等の記載に改ざんを施すなどしたうえ、これを複写機械で複写する方法により、あたかも真正な右売買契約書を原形どおり正確に複写したかのような形式、外観を備えるコピーを作成した所為は、その改ざんが原本自体にされたのであれば未だ文書の変造の範ちゆうに…
事件番号: 昭和24(れ)856 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 破棄自判
一 按ずるに刑法第七條にいわゆる公務員は官制職制によつて其職務權限が定まつているものに限らずすべて法令によつて公務に從事する職員を指稱するものであつて其法令中には單に行政内部の組織作用を定めた訓令と雖も抽象的の通則を規定しているものであれば之を包含するものであることは大審院判例の示すところであつて、今之れを改むべき理由…