刑訴規則第一七八条第一項前段、第三項の規定は、同第二五〇条により控訴の審判に準用があるものと解すべきである
刑訴規則第一七八条第一項前段、第三項の規定は、控訴の審判に準用があるか
刑訴法404条,刑訴法289条,刑訴規則178条,刑訴規則250条
判旨
控訴審の必要的弁護事件において、弁護人不在のまま控訴趣意書の提出期限が経過したことは手続規定に違反するが、事案が簡明で被告人が自白しており、その後の公判で弁護人が異議なく弁論した等の事情があれば、判決に影響を及ぼす法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
必要的弁護事件において、弁護人が選任されないまま控訴趣意書の提出期限が経過した手続的違法が、刑訴法411条にいう「判決を破棄しなければ著しく正義に反するもの」として破棄事由に該当するか。
規範
必要的弁護事件において、裁判所が弁護人選任の照会に対し期限内に回答がないにもかかわらず直ちに弁護人を選任せず、弁護人がいない状態で控訴趣意書の提出期限を経過させたことは、刑訴規則178条1項・3項(同250条で準用)に違反する。もっとも、当該違反が「判決を破棄しなければ著しく正義に反する」(刑訴法411条1号)といえるかは、事案の性質、被告人の認否、その後の弁護人による弁護活動の状況を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
窃盗罪に問われた被告人(必要的弁護事件)に対し、控訴審裁判所は弁護人選任の照会を行ったが、被告人からの回答がないまま控訴趣意書の提出期限が経過した。裁判所は提出期限から約8か月後、第1回公判日の6日前にようやく国選弁護人を選任した。被告人自身は期限内に自ら控訴趣意書を提出していた。選任された弁護人は、第1回公判に出頭し、被告人が提出した控訴趣意書に基づき異議なく弁論を行い、そのまま結審した。なお、被告人は第1審で事実を自白していた。
あてはめ
本件では、弁護人の選任を怠ったまま提出期限を徒過させた点に法令違反が認められる。しかし、①本件は窃盗という事案が簡明な事件であり、②被告人が第1審から自白していること、③選任された国選弁護人が第1回公判で被告人作成の控訴趣意書に基づき異議なく弁論を行っていることが認められる。これらの事情に照らせば、弁護人不在のまま提出期限が経過したことによる実質的な不利益は小さく、本件の法令違反は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
控訴審における弁護人選任の遅滞は法令違反であるが、本件の諸事情に照らせば、破棄自体の理由となる著しい正義反には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
必要的弁護事件における弁護権保障の重要性を確認しつつ、実務上は「手続の懈怠」が直ちに破棄事由となるわけではなく、弁護活動の代替可能性や被告人の不利益の程度によって結論が左右されることを示している。答案上は、手続違憲・違法を指摘した上で、411条等の救済の必要性を論じる際の「著しい正義反」のあてはめモデルとして活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1115 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において国選弁護人が選任されないまま控訴趣意書の提出期限が経過したとしても、それが被告人の弁護人選任請求の遅滞に起因するものであるならば、被告人の弁護権を侵害した違憲・違法の事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原審(控訴審)から控訴趣意書提出最終日(昭和29年12月10日)の通…