一 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実とは、公訴事実としては別個の事実であつて、公訴事実の同一性を認むべきではない。 二 本件における道路交通取締法違反(無謀操縦)の罪と業務上過失致死罪とは別個独立の犯罪であつて、右両者の間には牽連関係ないし一所為数法の関係は存しない。
一 道路交通取締法違反(無謀操縦)と業務上過失致死の各事実が公訴事実の同一性を欠く一事例 二 道路交通取締法違反(無謀操縦)罪と業務上過失致死罪との間に牽連関係乃至一所為数法の関係が存しない場合
道路交通取締法28条1号,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項,刑法54条1項,刑法211条,刑訴法256条,刑訴法312条1項
判旨
道路交通取締法違反(無謀操縦)の事実と業務上過失致死の事実は、公訴事実の同一性が認められず、かつ独立別個の犯罪を構成し、牽連犯や観念的競合の関係にもない。
問題の所在(論点)
1.無謀操縦の事実と業務上過失致死の事実に公訴事実の同一性が認められるか。2.両罪は観念的競合(刑法54条1項前段)または牽連犯(同項後段)の関係にあるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)が認められるためには、両事実が単一かつ同一の社会的事実であることを要する。また、罪数論上の検討において、一個の行為が複数の罪名に触れる場合(観念的競合)や、手段・結果の関係にある場合(牽連犯)に当たらない限り、各事実は独立別個の併合罪として扱われる。
重要事実
被告人は車両の無謀操縦(道路交通取締法違反)を行い、その過程で業務上の過失により人を死亡させた(業務上過失致死)。第一審は業務上過失致死罪の成立を認め、被告人側は無謀操縦の事実と業務上過失致死の事実の同一性、および罪数関係(一罪性)について争い上告した。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
あてはめ
本件における無謀操縦の事実と業務上過失致死の事実は、公訴事実として別個の事実に属する。これらは社会的事実として単一のものとはいえず、公訴事実の同一性を認めることはできない。また、法的な評価としても、無謀操縦という行為態様と過失による致死という結果は、それぞれ独立して犯罪を構成する。両者の間に手段・目的の関係(牽連犯)や、一個の行為が複数の罪名に触れる関係(観念的競合)を認めることはできない。
結論
無謀操縦と業務上過失致死は別個の事実であり、公訴事実の同一性は認められない。また、両罪は併合罪の関係にあり、一罪としての関係(牽連犯・観念的競合)も認められない。
実務上の射程
交通事故に関連する行政刑罰(道交法違反)と過失犯(過失致死傷)の罪数関係および同一性を判断する際の基礎となる。事案の具体的態様によっては観念的競合を認める余地もあるが、本判決はそれらを独立した事実として厳格に分離する判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和37(あ)2314 / 裁判年月日: 昭和39年4月7日 / 結論: 棄却
一 原判示の飲酒酩酊による無謀操縦の罪と業務上過失致死罪とは刑法第四五条前段の併合罪の関係にあると判示した原判決の結論は相当である(昭和三五年(あ)第二一二〇号同三八年一一月一二日第三小法廷判決参照)。 二 (原判示の要旨)所論は要するに論旨指摘の仙台及び札幌各高裁の二つの判例を挙げて飲酒酩酊して自動車の無謀操縦をした…
事件番号: 昭和34(あ)1778 / 裁判年月日: 昭和35年1月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上過失致死罪における「業務」とは、本件犯行直前にも数回にわたり自動三輪車の運転を反復継続して行っていた事実があれば肯定される。また、自白の補強証拠は犯罪構成要件たる事実全体について存在すれば足り、自白の各部分について個別に要するものではない。 第1 事案の概要:被告人が自動三輪車を運転中に過失…
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
事件番号: 昭和37(あ)502 / 裁判年月日: 昭和38年4月17日 / 結論: 破棄自判
車両等の運転者が、いわゆる「ひき逃げ」をした場合には、道路交通法第七二条第一項前段違反と同項後段違反の各罪が成立し、両者は併合罪の関係に立つものと解すべきである。