一 新聞が真実を報道することは、憲法第二一条の認める表現の自由に属し、またそのための取材活動も認められなければならないことはいうまでもないが、その自由も無制限であるということはできず、たとい公判廷の情況を一般に報道するための取材活動であつても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し、被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するが如きものはもとより許されないところである。 二 刑訴規則第二一五条は憲法第二一条に違反しない。
一 報道のための取材活動と憲法第二一条 二 刑訴規則第二一五条は憲法第二一条に違反するか
法定等の秩序維持に関する法律2条1項,憲法21条,刑訴規則215条
判旨
新聞の報道の自由は憲法21条の保障の下にあるが、公判廷における取材活動が審判の秩序を乱し、訴訟関係人の正当な利益を害する場合は、公共の福祉による制限を受ける。裁判所の許可なく公判開廷中に写真撮影を行う行為は、法廷等の秩序維持に関する法律に基づき制裁の対象となり、これを制限する刑事訴訟規則は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
憲法21条が保障する報道の自由および取材活動に対する制限の可否、ならびに法廷内での写真撮影を裁判所の許可にかからしめる刑事訴訟規則215条の合憲性が問題となる。
規範
1. 新聞の報道の自由及び取材活動は、憲法21条の保障の下にあるが、無制限ではなく公共の福祉(憲法12条)による制限を受ける。 2. 公判公開の趣旨は審判の公正を保障する点にあり、取材活動が公判廷の審判の秩序を乱し、被告人等の正当な利益を不当に害する場合は許されない。 3. 法廷内での写真撮影は、時・場所等の状況により審判の公正を害する恐れがあるため、裁判所の裁量により制限・禁止することができ、その手続を定める刑事訴訟規則215条は憲法に適合する。
重要事実
事件番号: 昭和28(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和33年10月15日 / 結論: 棄却
一 法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は従来の刑事的行政的処罰のいずれの範疇にも属しないところの、本法によつて設定された特殊の処罰である。そして本法は、裁判所または裁判官の面前その他直接に知ることができる場所における言動つまり現行犯的行為に対し裁判所または裁判官自体によつて適用されるものである。従つてこの場合は令状…
新聞社の写真班員である申立人は、強盗殺人事件の公判取材中、裁判所側から「写真撮影は公判開始前に限る」旨の告知を受け了解していた。しかし、開廷後に被告人の人定質問が始まると、裁判長の許可なく記者席を離れて法廷内の壇上に駆け上がり、裁判長の制止命令を無視して被告人の写真を撮影した。この行為が「法廷等の秩序維持に関する法律」2条1項に該当するとして制裁を科されたため、取材の自由を侵害し違憲であると主張して抗告した。
あてはめ
1. 申立人はあらかじめ「公判開始後は撮影を許さない」との裁判所の許可条件を了解していたにもかかわらず、これを無視して開廷後に撮影を強行している。 2. 撮影にあたり、勝手に記者席を離れ裁判官席のある壇上に駆け上がる行為は、厳粛であるべき公判廷の審判秩序を著しく乱すものといえる。 3. また、裁判長の直接的な制止命令に反して撮影を継続した事実は、法廷の秩序維持に真っ向から反するものであり、訴訟関係人の正当な利益を不当に害する恐れがある。したがって、本件制裁は公共の福祉に基づく正当な制限の範囲内であると評価される。
結論
本件制裁は、法廷の秩序維持および公正な裁判の実現という公共の福祉に基づく合理的な制限であり、憲法21条に違反しない。
実務上の射程
報道の自由・取材の自由の法的性格(21条で保障されること)を確認しつつ、法廷内という特殊な場所における秩序維持との調整枠組みを示したものである。答案上は、報道の自由が「十分尊重に値する」ものであるとしつつ、法廷等の具体的な場面における合理的制約の論拠として本判例のロジックを用いる。
事件番号: 昭和53(秩ち)2 / 裁判年月日: 昭和53年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律及び同法に基づく監置決定は、憲法18条、25条1項、31条、34条、37条、82条1項等の各規定に違反するものではない。 第1 事案の概要:抗告人が、法廷等の秩序維持に関する法律に基づき下された監置決定に対し、憲法15条2項、18条、25条1項、31条、32条、34条、…
事件番号: 昭和35(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和35年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律2条1項の制裁規定は、憲法に違反するものではない。法廷の秩序を維持するための裁判所の措置は、司法権の適正な行使を保障する観点から合憲と解される。 第1 事案の概要:本件は、法2条1項に基づき制裁を受けた者が、当該規定が憲法に違反すると主張して特別抗告を申し立てた事案であ…
事件番号: 昭和43(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和43年1月31日 / 結論: 棄却
法廷等の秩序維持に関する法律第三条第二項による行為者の拘束および同法第二条による制裁が、憲法第三四条、第三一条に違反するものでないことは当裁判所の判例(昭和二八年(秩ち)第一号同三三年一〇月一五日大法廷決定、刑集一二巻一四号三二九一頁参照)の趣旨とするところである。
事件番号: 昭和35(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和35年9月21日 / 結論: 棄却
法廷等の秩序維持に関する法律第二条にもとづき当該被告事件の弁護人を非公開の法廷で監置処分にしても、憲法第三一条、第三四条、第三七条第三項および第八二条に違反するものではない。