一 刑訴第二条第一項にいわゆる「現在地」とは、公訴提起の当時被告人が任意または適法な強制処分によつて現在する地域をいう。 二 被告人に黙秘権があるからといつて他人に虚偽の証言をするように教唆したときは、偽証教唆罪が成立する。 三 証人が証言拒絶権を有する事項であつても宣誓の上虚偽の供述をすれば偽証罪が成立する。
一 刑訴法第二条第一項にいわゆる「現在地」の意義 二 被告人の黙秘権と偽証教唆罪の成否 三 証人の証拠拒絶権と偽証罪の成否
刑訴法2条1項,刑訴法311条1項,刑訴法146条,刑訴法154条,刑法61条1項,刑法169条
判旨
被告人に自己の刑事事件について黙秘権があるとしても、他人に虚偽の陳述をさせるよう教唆した場合には偽証教唆罪が成立する。
問題の所在(論点)
被告人が自己の刑事事件に関し、他人に虚偽の証言をさせるよう教唆した場合に、自己の黙秘権の行使の延長として偽証教唆罪の成立が否定されるか。
規範
被告人自身に憲法上の権利として黙秘権が保障されているとしても、それは自己が直接証言することを強制されないことを意味するに過ぎない。したがって、他人に働きかけて司法作用を阻害する行為までを正当化するものではなく、他人に虚偽の陳述をさせるよう教唆したときは、偽証教唆罪が成立する。
重要事実
被告人Bは、自己の刑事事件に関する公判等において、証人に対し、自己の利益となるような虚偽の陳述を行うよう働きかけ、虚偽の証言をさせた。弁護人は、被告人自身に黙秘権がある以上、他人に虚偽の陳述を教唆したとしても偽証教唆罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
被告人には自己の刑事事件について供述を拒否する自由(黙秘権)が認められている。しかし、証人が刑法上の宣誓をした上で虚偽の陳述をすれば偽証罪が成立するのであり、被告人がその実行を積極的に働きかける行為は、国家の適正な司法作用を侵害するものである。被告人自身の黙秘権は、他人に虚偽の陳述をさせることまでを包含する権利とは解されないため、教唆行為について偽証教唆罪の構成要件を充足し、違法性も阻却されない。
結論
被告人が他人に虚偽の陳述をするよう教唆したときは、被告人自身に黙秘権があることをもって偽証教唆罪の成立を妨げるものではない。
実務上の射程
刑事被告人の防御権の限界を示す重要判例である。答案上は、犯人蔵匿教唆罪や証拠隠滅教唆罪の成否が問題となる場面でも、本判例の論理を援用し「防御権の濫用」として罪責を認める際の有力な根拠として使用する。
事件番号: 昭和31(あ)3125 / 裁判年月日: 昭和33年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に黙秘権が保障されているからといって、他人に虚偽の陳述をするよう教唆する行為は偽証教唆罪を構成し、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、証人として出廷する予定であったAに対し、被告人が裁判所で調べられる事態を想定して、事実を「すりかえて」虚偽の陳述をするよう供述を依頼した…