一 訴因の記載が明確でない場合には、裁判所は、検察官の釈明を求め、検察官がもしこれを明確にしないときにこそ、訴因が特定していないものとして公訴を棄却すべきである。 二 控訴審が事実の取調をすることなく、第一審の訴訟記録を書面審理しただけで、被告事件につき、更に判決することは憲法第三九条後段に違反しない。
一 訴因の記載が明確でない場合の措置 二 控訴審が事実の取調をすることなく、第一審の訴訟記録を書面審理しただけで、被告事件につき更に判決をすることは憲法第三九条後段に違反するか
刑訴法256条,刑訴法338条,刑訴法400条但書,憲法39条
判旨
起訴状における訴因が不明確な場合、裁判所は直ちに公訴を棄却するのではなく、まず検察官に釈明を求めて訴因の明確化を促すべきである。また、一連の刑事訴訟手続は同一の事件において継続する一つの危険を構成するため、下級審から上級審への継続は憲法39条の二重処罰禁止(二重の危険)に抵触しない。
問題の所在(論点)
1. 起訴状の訴因記載が不明確な場合、直ちに公訴を棄却すべきか、あるいは釈明を求めるべきか(刑事訴訟法256条の解釈)。 2. 審級を重ねて刑事手続が継続することは、憲法39条が禁止する二重の危険(二重処罰禁止)に抵触するか。
規範
1. 刑事訴訟法256条に基づく訴因の特定について、記載が不明確な場合には、検察官に対して釈明を求め、それでもなお明確にされないときに初めて訴因不特定として公訴を棄却すべきである。 2. 憲法39条後段の二重処罰の禁止は、同一の犯行について二度以上、罪の有無に関する裁判を受ける危険(danger)にさらされないという趣旨である。一審、控訴審、上告審の各手続は、同一事件における一つの継続した危険の各部分であり、訴訟が継続している限り二重の危険は生じない。
重要事実
被告人が刑事事件について起訴された際、起訴状における訴因の記載方法の不明確さや、家賃統制額の認定等に関する法規判断の適否、および一審・二審を経た上告審までの手続が憲法39条の二重処罰禁止に違反しないか等が争点となった事案である。弁護人は、訴因が不明確な場合の公訴棄却の要否や、一連の手続継続が二重の危険にあたると主張して上告した。
あてはめ
1. 訴因の明示方法に関し、裁判所は検察官の釈明を求めるべきであるとした後の判例(高裁判例集5巻2号132頁)の解釈を是認し、本件における原判決の判断に違法はないとした。 2. 憲法39条については、訴訟手続の開始から終末までを一つの継続状態とみるのが相当である。本件においても、第一審から上告審に至るまでの過程は唯一の危険が継続しているに過ぎず、新たな危険を創出する二重の危険には該当しない。 3. 家賃統制額の認定については、証拠資料に基づき正当な統制額であると法規判断上認めることは可能であり、事実認定の違法はない。
結論
1. 訴因記載に不明確な点があっても、釈明手続を経ずに公訴棄却すべきではない。 2. 審級の進行は継続する一つの危険であり、憲法39条に違反しない。 3. 本件上告を棄却する。
実務上の射程
訴因不特定の解消手続としての釈明の重要性と、憲法39条における「危険の継続」理論を確認した判例である。司法試験においては、公判前整理手続等における訴因の特定、および一事不再理効や二重の危険の趣旨を論じる際の基礎理論として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1784 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和27(あ)5051 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠として採用されていない供述調書が任意性を欠くものであったとしても、判決に影響を及ぼすことはなく、憲法38条2項や刑訴法319条の違反は成立しない。 第1 事案の概要:被告人が検察官に対して行った第一回供述調書について、弁護人は任意性がない自白であることを理由に、憲法38条2項および刑訴法319…