1 乗車定員が11人以上である大型自動車の座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった場合においても,乗車定員の変更につき国土交通大臣が行う自動車検査証の記入を受けていないときは,当該自動車はなお道路交通法上の大型自動車に当たる。 2 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった大型自動車を普通自動車免許で運転することが許されると思い込んで運転した者が,そのような席の状況を認識していたなど判示の事実関係の下においては,運転者に無免許運転の故意が認められる。
1 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となったが乗車定員の変更につき自動車検査証の記入を受けていない自動車と道路交通法上の大型自動車 2 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった大型自動車を普通自動車免許で運転することが許されると思い込んで運転した者に無免許運転の故意が認められた事例
(1,2につき)道路交通法3条,道路交通法施行規則2条,道路運送車両法67条1項 (2につき)刑法38条1項,3項,道路交通法64条,道路交通法117条の4
判旨
乗車定員11人以上の大型自動車の座席を一部取り外し、現実に10人分以下となった場合でも、自動車検査証の変更がない限り同法上の大型自動車に当たる。また、その客観的状況を認識していれば、普通免許で運転可能と誤信していても無免許運転の故意は阻却されない。
問題の所在(論点)
1. 座席が取り外され実質的に10人乗りとなった車両が、車検証の記載に基づき「大型自動車」と判定されるか(道路交通法3条、施行規則2条の解釈)。 2. 車両の客観的属性を認識しつつ、法令の解釈を誤って運転した場合に、無免許運転罪(同法64条)の故意が認められるか。
規範
1. 道路交通法上の車両区分の基準:乗車定員11人以上の大型自動車において、座席の取り外し等により現実の席数が10人分以下となった場合であっても、国土交通大臣による自動車検査証(車検証)の乗車定員変更記入を受けていない限り、当該車両はなお同法上の「大型自動車」に該当する。 2. 無免許運転罪の故意:当該車両が法令上「大型自動車」に該当する基礎となる客観的事実(座席の状況等)を認識していれば、自己の免許で運転可能であると誤信したとしても、それは単なる法律の不知ないし法律的評価の誤りにすぎず、犯罪の故意を阻却しない。
事件番号: 昭和45(あ)2031 / 裁判年月日: 昭和47年3月28日 / 結論: 棄却
道路交通法一一七条の罪の成立に必要な事実の認識は、必ずしも確定的な認識であることを要せず、未必的な認識でも足りる。
重要事実
被告人は、普通免許のみを所持していたが、勤務先の建設会社で後方座席6人分が取り外された車両(元は乗車定員15人、車検証上の記載も15人のまま)を運転した。被告人は、当該車両の座席が取り外されている状況は認識していたが、上司から「人を乗せなければ普通免許で大丈夫」と聞かされたことや、車検証の種別欄に「普通」と記載されていたことから、普通免許で運転可能と誤信して運転に及んだ。
あてはめ
1. 本件車両は車検証上の乗車定員が15人であり、変更手続もなされていない以上、現実に存する席数が10人分以下であっても法的には「大型自動車」に該当する。 2. 被告人は、本件車両の座席が取り外されているという「客観的な席の状況」を認識していた。自己の免許で運転可能と思い込んだ点は、法令の解釈を誤ったもの(法律の不知・当てはめの誤り)にすぎず、構成要件的事実の錯誤(事実の錯誤)には当たらない。したがって、無免許運転の故意が認められる。
結論
被告人には無免許運転罪が成立する。上告棄却。
実務上の射程
車両の属性(定員・重量等)に関する錯誤が「事実の錯誤」か「法律の錯誤(法律の不知)」かが争点となる事案で活用する。規範として「基準となる客観的事実の認識があれば、それに対する法的評価(免許の要否)を誤っても故意は阻却されない」という論理を提示する際に有用である。
事件番号: 平成20(さ)2 / 裁判年月日: 平成20年6月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】過積載車両の通行許可申請において、実際には最大積載量を超過する重量の車両を通行させる意図がありながら、これを秘してなされた申請は、公務員に対する虚偽の申立てにあたり、不実の公証役場書記官等への届出(公正証書原本不実記載罪)に準ずる違法性を有するか。 第1 事案の概要:被告人らは、本来の車両重量が1…
事件番号: 昭和43(あ)2640 / 裁判年月日: 昭和44年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の酒酔い運転罪の成立には、呼気中のアルコール保有量のみならず、被告人の身体的・精神的状況等を総合して正常な運転ができないおそれがある状態であることの認識が必要である。 第1 事案の概要:被告人がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転したとして、道路交通法…
事件番号: 昭和44(あ)1811 / 裁判年月日: 昭和44年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】車両等を人の身体に直接または間接に接触・衝突させる暴行罪の成立において、その認識は確定的なものであることを要せず、未必的な認識があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が自己の運転する車両等を人の身体に直接または間接に接触もしくは衝突させた事案において、被告人に暴行の故意があったかどうかが争点とな…
事件番号: 昭和37(あ)1690 / 裁判年月日: 昭和40年10月27日 / 結論: その他
道路交通取締法第二四条第一項、同法施行令第六七条所定の救護等の措置義務又は報告義務に違反するものとして、操縦者等に対し刑事責任を負わしめるのは、被害者の殺傷の事実又は物の損壊の事実が発生し、しかも操縦者等がこれらの事実を未必的にしろ認識した場合に限られるものと解するのを相当とする。