商品先物取引に関して、いわゆる客殺し商法により顧客にことさら損失等を与えるとともに、いわゆる向かい玉を建てることにより顧客の損失に見合う利益を会社に帰属させる意図であるのに、顧客の利益のために受託業務を行うものであるかのように装って、取引の委託方を勧誘し、その旨信用した顧客から委託証拠金名義で現金等の交付を受けた行為(判文参照)は、詐欺罪を構成する。
商品先物取引に関していわゆる客殺し商法により顧客から委託証拠金名義で現金等の交付を受けた行為について詐欺罪の成立が認められた事例
刑法246条1項
判旨
先物取引において、顧客にことさら損失を生じさせつつ自社に利益を帰属させる意図(客殺し商法)を秘し、誠実に助言を行うかのように装って委託証拠金を交付させる行為は、刑法246条1項の詐欺罪を構成する。
問題の所在(論点)
先物取引のように、性質上リスクが不可避で元本保証がないことを顧客が認識している場合であっても、受託者が不当な利益を得る意図を秘して勧誘する行為は、詐欺罪(刑法246条1項)の欺罔行為にあたるか。
規範
取引の性質上、元本保証がないことが明示されていたとしても、受託者が顧客の利益のために誠実に業務を行う意思がないにもかかわらず、これがあるかのように装って取引を勧誘し、証拠金を交付させた場合には、交付の判断の基礎となる重要な事実を偽ったものとして詐欺罪の欺罔行為にあたる。
重要事実
商品取引員であるA社の役員等であった被告人らは、無知な主婦等を対象に「必ずもうかる」と強調して勧誘しつつ、実際には頻繁な売買の繰り返しや相場に反する仲介等により顧客に損失を生じさせ、向かい玉を建てることで自社が利益を得る「客殺し商法」を行っていた。被害者らは誠実に助言を受けられると信じて委託証拠金を交付した。なお、取引開始時には元本保証がない旨の書面が交付され、途中で取引を中止し返還を求めることも物理的に不可能ではなかった。
事件番号: 昭和40(あ)2894 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】商品取引所法92条(当時)にいう「預託を受けて、またはその者の計算において占有する物」には、委託証拠金の代用として徴する有価証券(証拠金充用証券)は含まれない。 第1 事案の概要:被告人は商品仲買人株式会社の代表取締役として、顧客らから農産物等の売買取引に関する委託証拠金の代用たる有価証券(株券等…
あてはめ
本件では、被告人らは顧客にことさら損失を生じさせ、その損失に見合う利益を自社に帰属させる意図であった。それにもかかわらず、誠実に助言指導を行う商品取引員であるかのように装い、勧誘を行った。これは取引の委託を判断する上での本質的な事項を偽るものであり、被害者が「誠実に指導してもらえる」と誤信して証拠金を交付した以上、詐欺罪が成立する。元本保証がない旨の書面交付や中途解約の可能性といった事情は、この欺罔の本質に影響しない。
結論
被告人らの行為は刑法246条1項の詐欺罪を構成する。原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
投資・投機的取引における詐欺の成否が問題となる事案で活用できる。取引自体のリスクを顧客が容認していても、受託者の誠実義務や取引の仕組みそのものに欺罔がある場合には詐欺罪が成立することを示す射程の広い判例である。答案では、動機や不法領得の意思の背後にある「客殺し」の意図を欺罔の内容と結びつけて論述する。
事件番号: 昭和33(あ)122 / 裁判年月日: 昭和36年7月4日 / 結論: 棄却
原判決は、本件詐欺被害者等は何れも、本件売買の目的物(註。骨董品)は判示元公爵家所蔵品である旨の被告人の虚言を信用したためこれを買受けたものであつて、そうでなければ本件売買は行われなかつたものであると認定しており、右認定に誤りはないこと記録に徴して明らかである。されば右の如く、真実を告知するときは相手方が金員を交付しな…
事件番号: 昭和34(あ)903 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきである。