パトカーが赤色警光灯をつけずに最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合においても、警察官に速度違反の罪の成立することがあるのは格別、追尾によつて得られた速度測定結果を内容とする証拠の証拠能力の否定に結びつくような性質の違法はない。
赤色警光灯をつけずに最高速度を超過して追尾したことによつて得られた速度測定結果の証拠能力
刑訴法1条,刑訴法197条1項,道路交通法22条1項,道路交通法41条2項,道路交通法施行令14条
判旨
警察官が赤色警光灯をつけずにパトカーで速度違反車両を追尾して得た証拠は、たとえ警察官側に道路交通法上の手続違反があったとしても、証拠能力を否定するほどの重大な違法はない。
問題の所在(論点)
警察官が道路交通法上の手続(赤色警光灯の点灯)を遵守せずに速度違反車両を追尾して得た速度測定結果につき、違法収集証拠として証拠能力が否定されるか。
規範
捜査手続に法令違反がある場合であっても、直ちに証拠能力が否定されるわけではない。証拠能力の否定には、当該違法が証拠の収集手続において、証拠能力を否定するに足りる性質の違法(重大な違法)であることを要する。具体的には、警察官の行為が道路交通法違反の罪の成否を左右し得るものであっても、それが直ちに証拠排除に結びつくわけではない。
重要事実
警察官がパトカーを用いて、最高速度を超過して走行していた速度違反車両を追尾し、その速度を測定した。しかし、その追尾に際して、警察官はパトカーの赤色警光灯を点灯させていなかった。
あてはめ
本件では、警察官が赤色警光灯をつけずに追尾した行為が、警察官自身の道路交通法22条1項違反(最高速度超過)を構成する可能性はある。しかし、そのような手続上の不備がある追尾活動によって得られた証拠であっても、その性質上、証拠能力の否定に結びつくような重大な違法があるとはいえない。追尾という捜査活動の実態に照らせば、適正手続の観点から許容し得ないほどの逸脱とは解されないためである。
結論
本件の速度測定結果の内容を記録した証拠の証拠能力は肯定される。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則における「違法の重大性」を検討する際の判断材料となる。行政的な手続違反(道交法上の特例要件の不備等)があっても、捜査目的の正当性や証拠の重要性に照らし、直ちに排除されないことを示す射程を持つ。答案では「令状主義の精神を没却するような重大な違法」がないことを論証する文脈で使用する。
事件番号: 昭和59(あ)1472 / 裁判年月日: 昭和60年12月19日 / 結論: 棄却
一 道路標識等による最高速度の指定を都道府県公安委員会に委任することは、憲法三一条、七三条六号に違反しない。 二 証人尋問に要した訴訟費用の負担を有罪の言渡しを受けた被告人に命ずることは、憲法二九条、三二条に違反しない。