大分県屋外広告物条例で広告物の表示を禁止されている街路樹二本の各支柱に、政党の演説会開催の告知宣伝を内容とするいわゆるプラカード式ポスター各一枚を針金でくくりつけた所為につき、同条例三三条一号、四条一項三号の各規定を適用してこれを処罰しても憲法二一条一項に違反しない。
大分県屋外広告物条例三三条一号、四条一項三号を適用しても憲法二一条一項に違反しないとされた事例
大分県屋外広告物条例(昭和39年大分県条例71号)4条1項3号,大分県屋外広告物条例(昭和39年大分県条例71号)33条1号,憲法21条1項
判旨
屋外広告物法及び条例に基づく美観風致の維持・公衆への危害防止という規制目的は公共の福祉に合致し、その目的達成のために広告物の表示場所・方法等を規制することは、表現の自由に対する必要かつ合理的な制限として合憲である。
問題の所在(論点)
屋外広告物条例が、美観風致の維持や公衆への危害防止という目的のために、特定の場所における広告物の掲出を禁止し、違反者に刑事罰を科すことが、憲法21条1項(表現の自由)に違反しないか。
規範
都市の美観風致を維持し、公衆に対する危害を防止することは、国民の文化的生活の向上を目途とする憲法の下において「公共の福祉」に適合する。したがって、屋外広告物の表示の場所・方法等について、美観風致の維持等のために必要な規制を設けることは、表現の自由に対し許された「必要かつ合理的な制限」として合憲である。
重要事実
被告人は、大分県屋外広告物条例により広告物の表示が禁止されている街路樹2本の各支柱に、政党の演説会開催の告知を内容とするプラカード式ポスター(ベニヤ板貼付)各1枚を、針金でくくりつけた。被告人は同条例違反で起訴され、表現の自由を保障する憲法21条1項に違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和58(あ)1310 / 裁判年月日: 昭和61年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】屋外広告物条例及び軽犯罪法が定める表現活動の制限規定は、表現の自由を保障する憲法21条1項に違反せず、これを本件に適用することも合憲である。 第1 事案の概要:被告人らは、佐賀県屋外広告物条例が禁止する場所に広告物を掲出し、また軽犯罪法1条33号が規定する「他人の工作物等にみだりに広告物等をはり、…
あてはめ
本条例は、美観風致の維持と危害防止を目的としており、これらは公共の福祉を保持する正当な目的といえる。本件において、禁止対象とされている街路樹の支柱への広告物掲出を制限することは、特定の思想内容を規制するものではなく、掲出の場所・方法に関する態様規制である。街路樹は景観構成上の要保護性が高く、そこに周囲と調和し難い形状のポスターを掲出する行為を制限することは、目的達成のために必要かつ合理的な範囲に留まる。したがって、本件処罰は、表現の自由の核心的価値を不当に侵害するものとはいえない。
結論
本条例の規定を適用して被告人を処罰することは、憲法21条1項に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
屋外広告物という「場所・方法」の規制(態様規制)については、美観風致という比較的一般的な公益目的であっても合憲とされる。ただし、伊藤正己裁判官の補足意見は、思想・政治的表現がパブリック・フォーラム的性格を持つ物件になされる場合、「適用違憲」の余地があることを示唆しており、答案作成時には「場所の性質」や「具体的表現の価値」との比較衡量という枠組みを検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和41(あ)536 / 裁判年月日: 昭和43年12月18日 / 結論: 棄却
昭和三一年大阪市条例第三九号大阪市屋外広告物条例第一三条第一号、第四条第二項第一号、第三項第一号は、憲法第二一条に違反しない。
事件番号: 平成1(あ)511 / 裁判年月日: 平成4年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号及び大阪市屋外広告物条例の規定は、憲法21条および31条に違反せず、表現の自由の不当な制限には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、軽犯罪法1条33号前段(他人の工作物にみだりに広告物等をはりつけた罪)および大阪市屋外広告物条例(許可を受けずに広告物を掲出する等の罪)に違反す…
事件番号: 昭和47(あ)1564 / 裁判年月日: 昭和48年12月20日 / 結論: 棄却
大阪府屋外広告物法施行条例二条三項一号が憲法二一条および一四条に違反するものでないことは、当裁判所昭和四一年(あ)第五三六号同四三年一二月一八日大法廷判決・刑集二二巻一三号一五四九頁の趣旨に徴して明らかである。
事件番号: 昭和44(あ)893 / 裁判年月日: 昭和45年4月30日 / 結論: 棄却
昭和二四年高知県条例第三七号高知県屋外広告物取締条例三条、四条は、憲法二一条に違反しない。