被害者の死因となつたくも膜下出血が、被告人らの暴行に耐えかねた被害者が逃走しようとして池に落ち込み露出した岩石に頭部を打ちつけたため生じたものであるとしても、被告人らの暴行と被害者の右受傷に基づく死亡との間に因果関係を認めるのが相当である。
傷害致死罪における暴行と死亡との間に因果関係があるとされた事例
刑法205条
判旨
被告人らによる暴行を逃れようとして被害者が池に転落し岩石に頭部を打診して死亡した場合、当該暴行と死亡との間には刑法上の因果関係が認められる。
問題の所在(論点)
被告人らの暴行(実行行為)の後に、被害者の逃走および転落という被害者の行為(介在事情)が挟まって死の結果が発生した場合、実行行為と結果との間に刑法上の因果関係が認められるか。
規範
実行行為と結果との間に、直接的に結果を惹起した第三者の行為や被害者の行為等の介在事情が存在する場合であっても、実行行為に結果発生の危険性が含まれており、かつ、介在事情が実行行為に誘発されたものであるときは、実行行為と結果との間に因果関係を肯定できる。
重要事実
被告人および共犯者2名の計3名は、被害者に対して足蹴り等の暴行を加えた。被害者は、これら3名による執拗な暴行に耐えかね、その場から逃走しようとした。その際、被害者は誤って池に落ち込み、池の中に露出していた岩石に頭部を打ち付けた。これにより被害者は頭部擦過打撲傷を負い、それが原因でくも膜下出血を発症して死亡するに至った。
あてはめ
被告人ら3名による足蹴り等の暴行は、被害者に強い身体的苦痛と恐怖を与え、その場からの必死の逃走を余儀なくさせる性質のものであった。被害者が池に落ち込み岩石に頭部を打診したという介在事由は、被告人らの暴行から逃れようとする過程で生じたものであり、暴行によって誘発された密接に関連する行為といえる。したがって、たとえ死因となった受傷が岩石への打診によるものであっても、それは被告人らの暴行に起因するものと評価できる。
結論
被告人らの暴行と被害者の死亡との間には因果関係が認められる(傷害致死罪が成立し得る)。
実務上の射程
被害者の行為が介在する場合の因果関係に関する重要判例である。被害者の逃走行為が被告人の暴行によって「誘発」されたものである点に注目し、実行行為に内在する危険性が介在事情を通じて現実化したと論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和28(あ)2315 / 裁判年月日: 昭和28年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴行による傷害と死因との関係において、被害者の持病や搬送時の不手際といった介在事情があったとしても、暴行が死因に直接的または複合的に影響を与えている限り、刑法上の因果関係は否定されない。 第1 事案の概要:被告人Bおよび共同被告人Cは、被害者Aに対して下駄を用いるなどの暴行を加え、後頭部に腫瘤を生…