一 道路運送車両法に規定する電子情報処理組織による自動車登録フアイルは、刑法一五七条一項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたる。 二 道路運送車両法に規定する電子情報処理組織による自動車登録フアイルの「使用の本拠の位置」又は「使用者の住所」についての虚偽の記載は、刑法一五七条一項にいう「不実ノ記載」にあたる。
一 道路運送車両法に規定する電子情報処理組織による自動車登録フアイルと刑法一五七条一項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」 二 道路運送車両法に規定する電子情報処理組織による自動車登録フアイルの「使用の本拠の位置」等についての虚偽の記載と刑法一五七条一項にいう「不実ノ記載」
刑法157条1項,道路運送車両法6条,道路運送車両法7条,道路運送車両法9条,道路運送車両法58条,道路運送車両法72条1項,道路運送車両法施行規則35条の3第4号,自動車登録令7条」
判旨
道路運送車両法に規定する電子情報処理組織による自動車登録ファイルは、刑法157条1項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたる。また、当該ファイルへの「使用の本拠の位置」等の虚偽情報の記録は、同条の「不実ノ記載」に該当する。
問題の所在(論点)
電子情報処理組織による「自動車登録ファイル」(磁気ディスク)が、刑法157条1項の「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたるか。また、そこへの虚偽情報の記録が「不実ノ記載」にあたるか。
規範
1. 刑法157条1項の「公正証書ノ原本」とは、公権力によりその内容を確定し、権利義務に関する証明の具として強い証明力を付与された媒体を指す。 2. 従来の文書概念(可読性等)に完全には合致しない電磁的記録であっても、関係法令により権利義務に関する証明のための依拠すべき媒体として明定されている場合には、同条の保護客体に含まれる。 3. 公証の対象となる重要事項について真実に反する記録をさせることは「不実ノ記載」にあたる。
事件番号: 昭和46(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和48年3月15日 / 結論: 棄却
住民基本台帳法に基づく住民票の原本は、刑法一五七条一項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたる。
重要事実
被告人らは、自動車登録申請に際し、実際には使用していない場所を「使用の本拠の位置」として、電子情報処理組織によって管理される自動車登録ファイルに登録させた。当時、道路運送車両法の改正により、従来の紙の登録原簿に代わり、コンピュータの磁気ディスクを用いた登録ファイルが運用されていた。この磁気ディスクによる記録が刑法157条1項の客体にあたるかが争われた。
あてはめ
1. 自動車登録ファイルは、道路運送車両法6条1項等に基づき、自動車に関する権利義務の内容を確定し公証するために法が認めた媒体である。これは、改正前の紙の登録原簿に代わるものとして公務所に備えられたものであり、強い証明力が付与されている。 2. 磁気ディスク自体は直接の可読性を欠くものの、法がこれを権利義務の証明の拠り所として明定している以上、その証明機能の保護の必要性は従来の文書と同様に認められる。 3. 「使用の本拠の位置」や「使用者の住所」は、自動車の登録制度において個別の自動車を特定し、その権利関係や社会的責任の所在を明確にするための重要事項であり、これに虚偽の内容を記録させる行為は、公証の信頼を害する「不実ノ記載」といえる。
結論
自動車登録ファイルは「公正証書ノ原本」にあたり、虚偽の所在を登録させる行為は公正証書原本不実記載罪を構成する。
実務上の射程
本判決は、電磁的記録が刑法上の「文書」概念に収まるかという議論に対し、法令による証明機能の代替を根拠に「原本」性を認めた点に意義がある。ただし、本判決後の刑法改正(平成13年)により「電磁的記録不実記録罪(157条1項後段)」が新設されたため、現在の実務・答案作成においては、本判決の法理を踏まえつつ、現行法の「電磁的記録」としての構成を優先すべきである。
事件番号: 平成15(あ)1429 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 棄却
1 小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令(平成13年政令第383号による改正前のもの)8条の2の船籍簿は,刑法157条1項にいう「権利若しくは義務に関する公正証書の原本」に当たる。 2 小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令(平成13年政令第383号による改正前のもの)4条1項に基づく船籍票の内容虚偽の書…
事件番号: 昭和38(あ)2436 / 裁判年月日: 昭和39年6月2日 / 結論: 棄却
被告人は登記簿上の建物所有名義人甲との間に現実の売買の事実がないのに拘らず、売買契約が成立した旨虚偽の証書を作成し、売買を登記原因として所有権移転登記を申請し、その旨登記簿原本に記載させるなど原判示所為に出たものであるときは、たとえ、右建物の真実の所有者が被告人であり、甲が将来その登記名義を被告人に変更することを予め諒…
事件番号: 昭和31(あ)2416 / 裁判年月日: 昭和35年1月11日 / 結論: 棄却
たとい不動産の真実の所有者であつても、登記簿上他人名義で登記されている不動産につき、その印鑑を保管しているのを奇貨としてこれを使用し、その承諾がないのに、該不動産を同人から自己に売却した旨の売渡証書を作成し、これを原因としかつ自ら作成した同人名義の委任状を利用し、自己に所有権の移転を受けた旨虚偽の登録申請をなし、登録原…
事件番号: 昭和36(あ)2104 / 裁判年月日: 昭和37年3月1日 / 結論: 棄却
一 公証人に対し虚偽の申立をなし、公証人をして公正証書の原本に不実の記載をさせた場合において、嘱託人の一方が日本語を解しないのにかかわらず、公証人が公正証書を作成するに当り通事を立ち会わせず、通事をして証書の趣旨を右嘱託人に通訳させなかつた等その作成手続上の瑕疵があつたとしても、当該公正証書が一般人をしてその内容を真正…