国鉄の電気機関士による電気機関車出区点検の行為は、刑法九五条一項にいう公務員の職務にあたる。
国鉄電気機関士の出区点検行為と刑法九五条一項にいう公務員の職務
刑法95条1項
判旨
国鉄職員が行う電気機関車の出区点検行為のような、公営企業の非権力的・現業的な業務であっても、刑法95条1項の「職務」に含まれる。したがって、当該業務を暴行・脅迫により妨害した場合には公務執行妨害罪が成立する。
問題の所在(論点)
国鉄職員による電気機関車の点検のような、公営企業の「非権力的な現業的業務」が、刑法95条1項の「職務」に含まれるか。
規範
刑法95条1項にいう「職務」とは、公務員がその職務権限に基づいて取り扱う一切の事務を指す。そこには、権力的な作用だけでなく、公営企業の現業的・非権力的な事務であっても、それが公務員としての職務として遂行されるものである限り、等しく含まれると解するのが相当である。
重要事実
国鉄(当時)の電気機関士Aが、電気機関車の出区点検業務に従事していたところ、被告人らから暴行等の妨害行為を受けた。被告人らは、当該業務が非権力的な現業業務であるから、公務執行妨害罪の保護対象となる「職務」に当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件における電気機関車の出区点検行為は、国鉄という公法人の職員が法令に基づき従事する活動である。このような業務は私企業的性質を帯びる非権力的業務(現業業務)ではあるが、公務員がその適法な職務権限に基づいて遂行しているものである以上、法が特に保護すべき「職務」から除外すべき理由はない。したがって、これに対して暴行・脅迫を用いた行為は、同条の構成要件を充足するといえる。
結論
国鉄の電気機関士による出区点検行為は、刑法95条1項にいう公務員の職務にあたる。したがって、公務執行妨害罪の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
公務執行妨害罪における「職務」の範囲を広汎に認める通説・判例の立場を再確認したものである。権力的事務に限定せず、現業的・私経済的な事務も含む点に射程がある。答案上は、職務の内容が非権力的であることを理由に公務執行妨害罪の成立を否定しようとする主張に対する反論として、本規範を提示する。
事件番号: 昭和53(あ)549 / 裁判年月日: 昭和54年1月10日 / 結論: 棄却
国鉄の気動車運転士が急行列車の運転室内で中継駅の運転士と業務の引継・交替を行い、運転当直助役の許に赴いて終業点呼を受けるため駅ホームを歩行していた際、右運転士に対して加えられた本件暴行は、公務執行妨害罪を構成する。
事件番号: 昭和38(あ)1203 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法95条の公務執行妨害罪は、公務員個人を特別に保護するものではなく、公務員によって執行される公務そのものを保護法益とするものである。 第1 事案の概要:被告人らは、公務員の職務執行に際して暴行または脅迫を加えたとして、公務執行妨害罪等の刑責を問われた。これに対し弁護側は、同罪が公務員を不当に優遇…