刑訴法一九条により移送を受けた被告事件について、その当時土地管轄があることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が具備されるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての右瑕疵は治癒される。
土地管轄についての瑕疵が治癒されたと認められた事例
刑訴法2条,刑訴法6条,刑訴法9条,刑訴法19条,刑訴法329条,刑訴法331条,刑訴法378条1号,刑訴法398条,刑訴法399条,刑訴法412条
判旨
共謀に参加した事実が認められる者は、実行行為に直接関与せずとも、他人の行為を自己の手段として犯罪を行ったものとして刑法60条の共同正犯の責任を負う。また、当初は土地管轄が認められず管轄違いの判決をすべき状況であっても、訴訟係属後に土地管轄の要件を具備するに至った場合には、管轄の瑕疵は治癒される。
問題の所在(論点)
1. 実行行為に関与せず共謀に加わったのみの者について、刑法60条の共同正犯(いわゆる共謀共同正犯)が成立するか。 2. 公訴提起や移送の時点で土地管轄が認められない場合、その後に管轄要件を具備することで管轄の瑕疵は治癒されるか。
規範
1. 刑法60条の共同正犯は、共謀に参加した事実があれば、直接実行行為に関与していない者であっても、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったものとして成立する。 2. 土地管轄の有無は訴訟係属の時点だけでなく、その後の手続過程も考慮される。当初は土地管轄がない場合であっても、訴訟係属後に管轄権を有する関連事件との併合等により管轄権の要件を具備するに至ったときは、土地管轄の瑕疵は治癒される。
重要事実
被告人らは、土地管轄を有する千葉地裁に起訴された後、関連事件が係属する東京地裁へ移送された。しかし、移送時点では東京地裁に管轄があるとは認められない状況であった。その後、東京地裁への係属中に、被告人の一人(E)が東京都内に住所を有することが判明し、改めて東京地裁に起訴された。このEに対する事件と他の被告人らの事件は関連事件(刑訴法9条1項2号)にあたるため、併合審理が行われた。弁護側は東京地裁の管轄違いを主張した。
事件番号: 昭和56(あ)929 / 裁判年月日: 昭和59年11月30日 / 結論: 棄却
一 刑訴法一九条により移送を受けた被告事件について、当初土地管轄のあることが明らかでなかつたとしても、その後管轄違の申立がされるまでの間に土地管轄が備わるに至つた場合には(判文参照)、土地管轄についての瑕疵は治癒される。 二 刑訴法六条による関連事件の管轄が認められるためには、いわゆる固有管轄事件及びその関連事件が共に…
あてはめ
1. 共謀共同正犯について、判例(昭和33年大法廷判決)を維持し、意思を相通じて共謀したと認められる被告人らは、他人の行為を自己の手段として犯罪を行ったといえるため、共同正犯の責任を免れない。 2. 土地管轄について、本件各移送決定当時は東京地裁に管轄があったとはいえず、その段階では管轄違いの判決(刑訴法329条)をすべきであった。しかし、その後に被告人Eの住所が東京都内と判明し、同一裁判所に正当に公訴提起されたことで、他の被告人らとの関連性が生じた(刑訴法6条)。土地管轄制度が被告人の便宜等のためのものであり、審理の負担等を考慮する趣旨(刑訴法331条)に照らせば、現に管轄権を具備するに至った以上、当初の瑕疵を維持して管轄違いとする必要はないと評価される。
結論
1. 共謀共同正犯の成立を認めた原判断は正当である。 2. 土地管轄の瑕疵は治癒されており、東京地裁が実体判決をしたことは結論において相当である。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立を再確認するとともに、土地管轄という訴訟条件の瑕疵が、審理の進行中に生じた事後的欠缺の補完(関連事件の起訴等)によって治癒されることを認めた点に実務上の意義がある。答案では、管轄違いの主張に対し「手続の経済」や「土地管轄制度の趣旨」を根拠に治癒を肯定する際の論拠となる。
事件番号: 平成5(あ)253 / 裁判年月日: 平成7年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】集団的な実力行使が正当な抵抗権の行使として憲法上保障されるかは、その行為の手段、方法、規模、態様を総合考慮して決せられるべきであり、違法性が阻却されない態様での行為は憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人らは、凶器準備結集等の罪に問われた事案において、自らの行為は憲法上の抵抗権等に基づく…
事件番号: 昭和55(あ)1181 / 裁判年月日: 昭和56年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】火炎びんの使用等の処罰に関する法律(火炎びん処罰法)は、規制対象行為の危険性に照らし立法根拠が認められ、差別的立法ではなく、構成要件も明確であるため、憲法13条、14条、19条、21条1項、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反等で起訴された。こ…
事件番号: 昭和57(あ)1653 / 裁判年月日: 昭和58年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人らによる行為が正当防衛の要件を満たさず、かつ現行犯逮捕の手続にも違法な点がない場合、憲法31条、33条等の規定に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人ら9名が特定の所為(詳細は判決文からは不明)に及んだ事案。被告人らは、自らの行為が正当防衛に該当し違法性が阻却されること、及び捜査機…