刑訴法三二六条二項は、被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ同法三四一条により審理を進める場合においても適用される。
被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられ刑訴法三四一条により審理を進める場合と同法三二六条二項の適用の有無
刑訴法326条2項,刑訴法341条
判旨
被告人が法廷の秩序維持のために退廷を命ぜられ、刑事訴訟法341条に基づき被告人不在のまま審理が進められる場合においても、同法326条2項の同意擬制の規定が適用される。
問題の所在(論点)
被告人が法廷の秩序を乱したとして退廷を命ぜられ、刑事訴訟法341条に基づき不在のまま審理が行われる場合に、同法326条2項による証拠同意の擬制が認められるか。
規範
刑事訴訟法326条2項は、被告人が出頭せずとも証拠調べができる場合において、被告人・弁護人等がいずれも出頭しないときは、訴訟進行の著しい阻害を防止するため、被告人の真意にかかわらず同意があったものとみなす趣旨である。また、同法341条により秩序乱飲で退廷を命ぜられた場合、被告人は自らの責により反対尋問権を喪失し、不在のまま審理を追行できるとされる。これら公判手続の円滑な進行を図る法意を勘案すれば、同法326条2項は、同法341条により審理を進める場合にも適用される。
重要事実
被告人が公判において秩序維持のために裁判長から退廷を命ぜられ、刑事訴訟法341条の規定に基づき、被告人不在の状態で審理が継続された。その際、第一審裁判所は、被告人および弁護人が出頭していない状況において、証拠書類について同法326条2項を適用し、証拠同意があったものとみなして証拠採用の決定を行った。
事件番号: 昭和49(あ)2469 / 裁判年月日: 昭和50年9月11日 / 結論: 棄却
いったん公判期日に出頭した被告人が裁判長から法廷の秩序維持のため退廷を命ぜられたときは、裁判所は刑訴法三四一条に基づき、被告人不在のまま当日の公判審理を行うことができる。
あてはめ
本件では、被告人は秩序維持のために退廷を命ぜられており、自らの責によって公判への出席および反対尋問の機会を放棄したといえる。このような場合、刑事訴訟法341条により被告人不在のまま判決の前提となる証拠調べを進めることが可能である。ここで同法326条2項を適用しなければ、被告人が欠席しつつ同意もしないことで訴訟進行が著しく停滞することになるが、同条項の趣旨はまさにそのような阻害を防止する点にある。したがって、本件において被告人が不在の間に証拠書類を同意擬制により採用した措置は、法の予定する円滑な進行を図る目的に合致し、適法であると評価される。
結論
被告人が秩序維持のため退廷を命ぜられた場合でも、刑事訴訟法326条2項は適用され、証拠同意があったものとみなすことができる。
実務上の射程
被告人が出頭を拒否した場合だけでなく、法廷での不穏当な言動により退廷を命ぜられた場合にも伝聞例外の同意擬制(326条2項)が及ぶことを明示した。実務上、被告人の不出頭や不規則発言による審理停止を防ぐための強力な手続維持ツールとして機能する判例である。
事件番号: 昭和51(あ)1060 / 裁判年月日: 昭和52年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が裁判長の訴訟指揮に従わず、法廷の秩序を乱したために退廷命令が発せられた場合、当該被告人は自ら在廷して陳述する機会を放棄したものと解され、その不在下で審理を進めても憲法31条、37条1項・2項に違反しない。 第1 事案の概要:第一審の公判手続において、被告人が裁判長の訴訟指揮に従わずに法廷の…
事件番号: 昭和50(あ)1321 / 裁判年月日: 昭和51年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が法廷の秩序を乱し退廷命令を受けた場合や、国選弁護人が辞任届を提出しつつ不出廷を貫く場合において、被告人不在・弁護人不出廷のまま審理・判決を行うことは、憲法31条、37条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、第一審裁判所が被告人及び弁護人側の要求する事前の統一折衝や特定の審理方式を受…
事件番号: 昭和50(あ)1541 / 裁判年月日: 昭和51年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における弁論の併合・分離は受訴裁判所の合理的裁量に委ねられており、共同被告人のいわゆる分割審理も裁判所の合理的判断に基づく限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が共同被告人とされた事件において、第一審裁判所がいわゆる「分割審理」を行い、弁論を併合せず、あるいは一部を切り離して審理を進め…