少年の保護処分に対する抗告を受理した裁判所は、抗告提起期間内であっても抗告について裁判をすることができる。
少年の保護処分に対する抗告の提起期間内に抗告について裁判をすることの適否
少年法32条,少年審判規則43条
判旨
少年院送致等の決定に対する抗告審において、裁判所は、抗告提起期間内であっても抗告理由の補充を待たずに裁判をすることができ、特に迅速な裁判が望まれる事案等においてその補充を待たずに決定をしても違法ではない。
問題の所在(論点)
少年法に基づく抗告において、裁判所は抗告提起期間内であっても抗告理由の補充を待たずに決定をすることができるか。また、申立書に理由の補充を予感させる記載がある場合の判断の適法性が問題となる。
規範
少年審判規則43条は、抗告の趣意を簡潔に明示した完結した申立書の提出を予定している。したがって、抗告審は受理後、抗告提起期間内であるか否かにかかわらず、いつでも裁判をすることが可能であり、期間満了を待つ必要はない。もっとも、抗告人が期間内に補充する旨を「明示」して申し出た場合などは補充を待つのが相当な場合もあるが、事案の性質(迅速性の要請)や申立書の記載内容を総合して判断すべきである。
重要事実
少年は強姦致傷等の非行事実により初等少年院送致(特修短期処遇)の決定を受け、付添人はこれを不服として抗告した。付添人は申立書に「決定書謄本が未交付のため事実誤認を含む余地がある」旨を括弧書きしつつ、一方で「特修短期であるから早期に審理されたい」旨を付記した。原審は、抗告提起期間内であったが、付添人による「抗告申立補充書」の提出前に抗告棄却の決定をした。付添人は、理由の補充を待たずに決定した原審には判断遺脱の違法があると主張した。
事件番号: 昭和54(し)107 / 裁判年月日: 昭和54年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保護処分の決定に対する抗告の申立書の記載方式や抗告期間の定めは、専ら立法政策の問題であり、これらを定める少年審判規則が憲法14条、31条、32条に違反することはない。 第1 事案の概要:少年による保護処分決定に対する抗告手続において、抗告人が少年審判規則43条2項(抗告の申立理由の記載等)等の規定…
あてはめ
本件申立書には括弧書きの記載はあるが、必ずしも期間内に理由を補充する趣旨を「明示」したものとは認められない。加えて、本件は特修短期の処遇勧告付きの少年院送致決定に対する抗告であり、可能な限り迅速な裁判が望まれる事案である。さらに、付添人自身が申立書において「早期に審理を行っていただきたい」旨を上申していることからすれば、補充を待たずに判断した原審の措置に不当な点はない。
結論
原審が抗告申立補充書の提出を待たずに決定をしたことに違法、不当はなく、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
少年審判における迅速性の要請を重視した判例である。答案上は、少年審判規則が期間制限を設けていない点を確認しつつ、補充を待つべき「相当性」の有無を、①補充の意思の明示の程度、②事案の緊急性(短期処遇等)、③申立人の意向(迅速な審理の要望等)から判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成1(し)121 / 裁判年月日: 平成2年10月24日 / 結論: 棄却
家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。
事件番号: 平成24(し)181 / 裁判年月日: 平成24年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審の付添人ではなく、かつ抗告申立て時までに付添人選任届が提出されていない弁護士による抗告申立ては不適法であり、期間経過後に選任届が提出されても追認の効力は認められない。 第1 事案の概要:中等少年院送致決定に対し、弁護士が平成24年4月9日に再抗告を申し立てた。しかし、当該弁護士は原審における付…
事件番号: 平成5(し)96 / 裁判年月日: 平成5年11月24日 / 結論: 棄却
家庭裁判所は、抗告裁判所から差戻しを受けた事件が先に少年法一七条一項二号の観護の措置が採られたものであっても、審判を行うため必要があるときは、改めて同号の観護の措置を採ることができる。
事件番号: 昭和43(し)5 / 裁判年月日: 昭和43年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条に基づく再抗告において、実質的に単なる法令違反を主張するものや、事案の異なる判例の引用による判例違反の主張は、適法な再抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、少年審判の決定に対し再抗告がなされた事案である。再抗告人は、第一点として憲法違反を主張し、第二点として判例違反を主張…