入学選抜試験の答案は、刑法一五九条一項にいう事実証明に関する文書に当たる。
入学選抜試験の答案と刑法一五九条一項にいう事実証明に関する文書
刑法159条1項
判旨
大学入学試験の答案は、採点結果を通じて志願者の学力を示す資料となり、合否判定や入学許可の基礎となるものであるから、刑法159条1項にいう「事実証明に関する文書」に当たる。
問題の所在(論点)
大学入学試験の答案が、刑法159条1項にいう「事実証明に関する文書」に該当するか。
規範
刑法159条1項の「事実証明に関する文書」とは、実生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいう。
重要事実
被告人が関与した入学選抜試験において、志願者が試験問題に対し正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載した「答案」が作成された。この答案が私文書偽造罪の客体たる「事実証明に関する文書」に該当するかが争われた。
あてはめ
答案それ自体は志願者が正解と判断した内容を記載した文書であり、直ちに学力を示すものではない。しかし、当該答案が採点されることで、その結果は志願者の学力を示す資料となる。さらに、この資料を基に合否判定が行われ、合格者が入学を許可されるという法的・社会的な効果が生じる。したがって、答案は志願者の学力の証明に関するものであり、「社会生活に交渉を有する事項」を証明する文書といえる。
結論
本件入学選抜試験の答案は、事実証明に関する文書に当たる。
実務上の射程
答案のような、それ自体では中間的な性格を持つ文書であっても、その後の手続(採点・判定)を経て法的・社会的な地位(合格・入学)を左右する資料となる場合には、広く「事実証明に関する文書」に含まれることを示した。試験不正に関連する有印私文書偽造罪の成否を検討する際の標準的な規範となる。
事件番号: 昭和36(あ)2043 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
原判決は、刑法一九条一項三号、二項により押収にかかる「A印」と刻してある丸型印鑑一個を被告人らから没収するとしていること所論のとおりであつて、論旨引用の大審院昭和七年(れ)第六七五号同年七月二〇日判決の趣旨に相反するわけであるが、原判決が刑法一九条を適用して所論の印章を没収している以上、同条一項各号の適用に誤があつても…
事件番号: 平成9(あ)1227 / 裁判年月日: 平成11年12月20日 / 結論: 棄却
虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真がはり付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。
事件番号: 昭和59(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和60年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に未起訴の犯罪を処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、憲法31条及び39条には反しない。 第1 事案の概要:被告人は有印私文書偽造・同行使等の罪で起訴された。第一審判決は、本件各犯行の犯罪組成物件を没収するとともに、未起訴の事実(余罪)を量刑の資料として考慮…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…