大阪府警察本部通達に基づいて警察署長から委嘱を受け、非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員(判文参照)は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらない。
少年補導員が刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらないとされた事例
刑法195条1項,刑訴法262条1項
判旨
刑法195条1項にいう「警察の職務を補助する者」とは、警察の職務を補助する法的権限を有する者に限られる。警察署長から委嘱を受けた少年補導員は、私人としての協力者にすぎず、法的権限を有しないため、同条の主体には該当しない。
問題の所在(論点)
警察署長から委嘱を受け、警察官と連携して少年補導にあたる「少年補導員」が、刑法195条1項(特別公務員暴行陵虐罪)にいう「警察の職務を補助する者」に該当するか。
規範
刑法195条1項が特別の処罰類型を定めた趣旨は、裁判、検察、警察という国家作用の適正を保持することにある。この趣旨および文理に照らせば、同条項にいう「警察の職務を補助する者」とは、警察の職務を補助する法的権限を有する者であることを要すると解するのが相当である。
重要事実
被疑者Aは、警察署長から委嘱を受けた少年補導員として警察官らと共に少年補導に従事していた際、申立人に対し暴行を加えた。少年補導員制度は警察庁や府警の通達に基づき創設されたものであり、その任務は非行少年の早期発見や啓もう活動等とされているが、実施要綱には少年補導員が法的に何ら職務権限を有するものではないことが明示されていた。
事件番号: 昭和63(し)76 / 裁判年月日: 平成元年3月14日 / 結論: 棄却
警察官が職務として行つたものであつても、終始何人に対しても警察官でないことを装つてした本件電話盗聴行為は、職権を濫用して行つたものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない。
あてはめ
少年補導員は、警察署長から私人としての協力を依頼され、その自発的意思に基づいて警察官と連携しつつ活動する存在である。本件の実施要綱においても、法的な職務権限を有しないことが明記されている。したがって、少年補導員は警察の職務を補助する「職務権限」を有する者とはいえず、同条項の主体としての要件を欠く。
結論
少年補導員は刑法195条1項にいう「警察の職務を補助する者」に該当しない。したがって、被疑者Aの行為について、同罪を前提とする付審判請求を行うことはできない。
実務上の射程
本判例は、特別公務員暴行陵虐罪の主体が「法的権限」を有する者に限定されることを明確にした。答案上では、職務の実態だけでなく、根拠法令や通達等に基づき「法的権限」が与えられているかを検討する際の指標となる。民間委託された業務に従事する者の身分性を判断する際にも、この「法的権限の有無」という枠組みは有効である。
事件番号: 平成4(し)110 / 裁判年月日: 平成4年12月14日 / 結論: 棄却
国選弁護人を付されて審理を受けた被告人が判決宣告後に上訴申立てのため必要であるとして公判調書の閲覧を請求した場合は、刑訴法四九条にいう「弁護人がないとき」に当たらず、右閲覧請求は許されない。
事件番号: 昭和32(し)41 / 裁判年月日: 昭和33年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求において、前提となる法律の違憲性を主張する場合であっても、被疑事実としての具体的犯罪行為の存在について嫌疑がないと判断される限り、当該違憲の主張は結論に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:特別抗告申立人が、土地測量に伴う警察官の警備行動について、特別公務員暴行傷害罪等の嫌疑があるとして…
事件番号: 昭和42(し)40 / 裁判年月日: 昭和42年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付随的申判請求(付記:検察審査会法上の用語との混同を避けるため、通常は「付審判請求」と称される)を棄却する決定に対して、直接最高裁判所に特別抗告を申し立てることは、刑事訴訟法433条の要件を備えず不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、旭川警察署の氏名不詳の警察官による特別公務員暴行の事実につ…
事件番号: 昭和26(し)109 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求の対象は、刑法193条ないし196条の罪(職権濫用罪等)について告訴・告発がなされた場合に限定される。公務員が調査要求を斥けたに過ぎない行為は、職権を濫用して他人の権利行使を妨害したものとはいえず、同罪の構成要件を欠くため付審判請求は不適法となる。 第1 事案の概要:抗告人は、町長および…