国選弁護人を付されて審理を受けた被告人が判決宣告後に上訴申立てのため必要であるとして公判調書の閲覧を請求した場合は、刑訴法四九条にいう「弁護人がないとき」に当たらず、右閲覧請求は許されない。
国選弁護人を付された被告人が判決宣告後上訴申立てのため公判調書の閲覧を請求することの可否
刑訴法32条2項,刑訴法49条
判旨
判決宣告後も、上訴申立権の行使を検討する上で必要な範囲において弁護人選任の効力は持続するため、刑事訴訟法49条の「弁護人がないとき」には当たらない。したがって、被告人本人による公判調書の閲覧請求は認められない。
問題の所在(論点)
判決宣告後において、第1審で選任された弁護人の効力が存続するか。また、これにより被告人本人による公判調書の閲覧請求(刑事訴訟法49条)が制限されるか。
規範
弁護人選任の効力は判決宣告によって当然に失われるものではなく、刑事訴訟法355条が原審の弁護人に上訴申立権を認めている趣旨から、上訴権行使を検討する上で必要な一切の訴訟行為(接見、保釈請求、訴訟書類の閲覧等)を行うことができる限度で持続する。この状態にある被告人は、同法49条にいう「弁護人がないとき」には該当しない。
重要事実
有印公文書偽造等被告事件の被告人に対し、国選弁護人が付されて審理が行われた。第1審判決が宣告された翌日、被告人は上訴の申立てを検討するために必要であるとして、裁判所に対し自ら公判調書の閲覧を請求したが、裁判所はこれを許さなかった。
事件番号: 昭和49(し)20 / 裁判年月日: 昭和49年3月20日 / 結論: 棄却
付審判請求事件の特別抗告申立には刑訴法三六六条一項は準用ないし類推適用されない。
あてはめ
本件において被告人には国選弁護人が付されており、判決宣告後も当該弁護人は上訴権行使の検討に必要な範囲で依然としてその資格を有している。そのため、被告人は「弁護人がないとき」には当たらないと解される。したがって、弁護人を通じて閲覧すべきであり、被告人本人に閲覧権は認められない。
結論
被告人は刑事訴訟法49条の「弁護人がないとき」に当たらないため、本人による公判調書閲覧を認めなかった原判断に違法はない。
実務上の射程
被告人本人の閲覧権を定めた刑訴法49条の「弁護人がないとき」の解釈を示す。判決宣告後、上訴申立てまでの「中間地帯」においても弁護人の権限が持続することを前提に、本人と弁護人の役割分担(弁護人依頼権の優越)を明確にする文脈で用いる。
事件番号: 昭和48(し)42 / 裁判年月日: 昭和49年3月13日 / 結論: その他
本件付審判請求事件の審理手続において裁判所が定めた審理方式のうち、請求人代理人に対し検察官から裁判所に送付された一件記録の閲覧謄写を許可する部分は、本件事案(判文参照)のもとでは、裁判所に許された裁量の範囲を逸脱し違法である。
事件番号: 昭和43(し)85 / 裁判年月日: 昭和43年11月13日 / 結論: 棄却
在監者の上訴申立に関する刑訴法第三六六条第一項は、いわゆる審判請求事件についてされた抗告棄却の決定に対し、右請求をした在監者が特別抗告の申立書を差し出す場合には準用ないし類推適用されないものと解すべきである。
事件番号: 昭和45(し)99 / 裁判年月日: 昭和45年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求事件の申立棄却決定に対する特別抗告において、在監者が抗告期間内に申立書を監獄の長等に差し出したとしても、刑事訴訟法366条1項のいわゆる在監者特則は準用ないし類推適用されない。 第1 事案の概要:付審判請求を行った申立人は、その請求を棄却する決定を受けたため、特別抗告を申し立てようとした…
事件番号: 平成4(し)120 / 裁判年月日: 平成6年3月29日 / 結論: 棄却
大阪府警察本部通達に基づいて警察署長から委嘱を受け、非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員(判文参照)は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法一九五条一項にいう警察の職務を補助する者に当たらない。