被告人の行為が大赦令(平成元年政令第二七号)により赦免の対象とされる罪に当たり、包括一罪を構成する場合に、その一部の行為が同時に赦免されない他の罪名に触れるため同政令二条により赦免されないときは、その余の行為についても赦免されない。
赦免の対象とされる罪に当たり包括一罪を構成する行為の一部が同時に赦免されない罪名に触れる場合におけるその余の行為と大赦令(平成元年政令第二七号)との関係
大赦令(平成元年政令27号)1条9号,大赦令(平成元年政令27号)2条,軽犯罪法1条33号前段,大阪府屋外広告物条例(昭和24年大阪府条例79号。平成4年同条例3号による改正前のもの)2条2項4号,大阪府屋外広告物条例(昭和24年大阪府条例79号。平成4年同条例3号による改正前のもの)17条1号
判旨
複数の対象物に貼り札をした行為が包括一罪を構成する場合、その一部の行為が他の罪名(条例違反)に触れ、恩赦(大赦)の除外事由に該当するときは、当該包括一罪の全体について赦免されないと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
一連の貼り札行為が包括一罪(軽犯罪法違反)を構成する場合において、その一部の行為のみが条例違反(大赦令2条の除外事由)に該当するとき、条例違反に該当しない残余の行為(本件電柱への貼り札)についても赦免されないこととなるか。
規範
包括一罪を構成する一連の行為のうち、一部の行為が他の罪名に触れる等の理由で恩赦(大赦令)の除外事由に該当する場合、罪数論上の不可分性に基づき、当該一罪を構成する他の行為についても同様に赦免の対象外となる。
重要事実
被告人は、電柱、信号機柱、および道路案内標識柱に対し、みだりに貼り札をした。これらの行為は包括して一個の軽犯罪法1条33号前段違反の罪を構成するものであった。当時の大赦令は軽犯罪法違反の罪を赦免の対象としていたが、同令2条は、その行為が同時に他の罪名に触れる場合は赦免しないと定めていた。本件のうち、信号機柱および道路案内標識への貼り札行為は、大阪府屋外広告物条例違反にも該当するものであった。
事件番号: 平成1(あ)511 / 裁判年月日: 平成4年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号及び大阪市屋外広告物条例の規定は、憲法21条および31条に違反せず、表現の自由の不当な制限には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、軽犯罪法1条33号前段(他人の工作物にみだりに広告物等をはりつけた罪)および大阪市屋外広告物条例(許可を受けずに広告物を掲出する等の罪)に違反す…
あてはめ
被告人が電柱に貼り札をした行為は、信号機柱や道路案内標識柱への貼り札行為と包括的に一個の軽犯罪法違反の罪を構成する。このうち後者の行為は、同時に大阪府屋外広告物条例違反の罪にも該当するため、大赦令2条により赦免されない。包括一罪は刑事手続上一個の罪として扱われるべきものであるから、一部に赦免されない事由がある以上、それと不可分な関係にある本件電柱への貼り札行為についても、全体として赦免の効果は及ばないといえる。
結論
被告人の行為は全体として大赦による赦免の対象とはならず、有罪とした原判決は維持される。
実務上の射程
包括一罪や観念的競合など、科刑上一罪または本来の一罪として扱われる関係にある事案において、恩赦の対象外となる事由(除外条項)が一部に存在する場合の処理指針を示す。罪数論における「一個の罪」としての評価が、恩赦の効力範囲にも連動することを明示した点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和62(あ)1273 / 裁判年月日: 昭和63年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】軽犯罪法1条33号前段にいう「みだりに」とは、他人の工作物にはり札をするにつき、社会通念上正当な理由があると認められない場合を指し、憲法31条の適正手続に違反しない。また、屋外広告物条例及び同法に基づきはり札行為を処罰することは、表現の自由を保障する憲法21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告…
事件番号: 昭和47(あ)1564 / 裁判年月日: 昭和48年12月20日 / 結論: 棄却
大阪府屋外広告物法施行条例二条三項一号が憲法二一条および一四条に違反するものでないことは、当裁判所昭和四一年(あ)第五三六号同四三年一二月一八日大法廷判決・刑集二二巻一三号一五四九頁の趣旨に徴して明らかである。
事件番号: 昭和49(あ)1377 / 裁判年月日: 昭和50年5月29日 / 結論: 棄却
一 大阪市屋外広告物条例(昭和四九年四月一日大阪市条例第三二号による改正前のもの)二条一項、一六条一号は憲法二一条、四条三項、三一条、九四条、四一条に違反しない。 二 被告人に対する本件公訴事実のうち、被告人が大阪市条例によりはり紙の表示が禁止された物件である電柱にビラ五枚を表示した点については、原判決後の法令により刑…