架空の経費を計上して所得を秘匿することに協力した者に支払った手数料を法人税の課税標準である所得の金額の計算上損金の額に算入することは許されない。
所得を秘匿するために要した費用を法人税の課税標準である所得の金額の計算上損金の額を算入することの許否
法人税法22条1項,法人税法22条3項,法人税法22条4項,法人税法159条1項
判旨
架空の経費を計上して所得を秘匿するために協力者へ支払った手数料は、公正処理基準に反する会計処理により法人税を免れるための費用であり、法人税法22条4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従ったものとはいえず、損金の額に算入することはできない。
問題の所在(論点)
所得秘匿を目的として架空経費を計上するに際し、その協力者に支払った手数料が、法人税法22条3項・4項にいう損金の額に算入できるか(公正処理基準に合致するか)。
規範
法人税法22条3項各号に掲げる費用等の額は、同条4項により「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(公正処理基準)に従って計算されるべきものである。事実に反する会計処理は公正処理基準において否定されるべきであり、公正処理基準に反する処理により法人税を免れるための費用又は損失は、同条4項の公正処理基準に従ったものとは認められない。
重要事実
不動産売買等を目的とする被告人会社Aは、所得秘匿の手段として、社外の協力者に架空の土地造成工事の見積書及び請求書を提出させた。Aはこれらを用いて約2億8464万円の架空造成費を原価計上して損金算入し、法人税の確定申告を行った。その際、当該協力者に対して架空計上への協力に対する対価(手数料)として合計1900万円を支払った。
事件番号: 昭和35(あ)560 / 裁判年月日: 昭和38年10月22日 / 結論: 棄却
一 原判決の確定した事実関係の下においては、原審が所論未払事業税、諸未払金、交際費を被告会社の本件犯則事業年度の損金に計上することを認めなかつたのは正当である。 二 (原判示の要旨) (イ)未払事業税について 所論昭和二十二、二十三両年度の法人所得に対する事業税については、当時賦課徴収制が採られ、納税義務者に対する徴収…
あてはめ
まず、架空の経費を計上して所得を秘匿する行為自体が、客観的事実に反する会計処理であり、公正処理基準に照らして否定される。本件手数料は、この「公正処理基準に反する会計処理」に協力したことへの対価として支出されたものである。そうすると、当該支出は公正処理基準に反する手法で法人税を免れるための費用といえる。したがって、このような支出を費用又は損失として損金算入する会計処理は、適正な収益・費用の計上を求める公正処理基準に従ったものとは評価できない。
結論
本件手数料の支出は、公正処理基準に従ったものとはいえないため、法人税法上の損金の額に算入することはできない。
実務上の射程
法人税法22条4項の「公正処理基準」が、単なる企業会計の慣行のみならず、脱税目的等の不当な処理を排除する法的規範としての側面を有することを示す。脱税工作のための支出(裏金や協力費)の損金算入性を否定する際の強力な論拠となる。
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
事件番号: 昭和60(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和63年9月2日 / 結論: 棄却
所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示…
事件番号: 平成12(あ)1714 / 裁判年月日: 平成16年10月29日 / 結論: 破棄差戻
被告会社が,A市内の土地を造成し宅地として販売するに当たり,A市から都市計画法上の同意権を背景として開発区域外の排水路の改修工事を行うよう指導された場合において,事実上その費用を支出せざるを得ない立場に置かれていたこと,同工事を請け負わせる建設会社に被告会社が支出すべき費用の額を見積もらせるなど,上記土地の販売に係る収…