1 少年保護事件の抗告裁判所による非行事実の認定に関する事実の取調べは,少年保護事件の抗告審としての性質を踏まえ,合理的な裁量により行われるべきである。 2 少年保護事件につき検察官のした抗告受理の申立てに基づく抗告審において,非行事実の認定に関し,家庭裁判所が検討していなかった共犯者のアリバイ供述等の信用性を検討しなければ,被害者の供述等について最終的な信用性の判断ができないなど判示の事情の下においては,抗告裁判所が上記アリバイ供述等の信用性に関して必要な事実の取調べを行うことは,合理的な裁量の範囲内にある。
1 少年保護事件の抗告裁判所による非行事実の認定に関する事実の取調べと抗告裁判所の裁量 2 少年保護事件の抗告裁判所が非行事実の認定に関し家庭裁判所において検討していない点について行った事実の取調べが合理的な裁量の範囲内にあるとされた事例
少年法32条,少年法32条の2,少年法32条の3第1項,少年法32条の4,少年法32条の6
判旨
少年保護事件の抗告審において、抗告裁判所が自ら事実の取調べを行うことは、少年保護事件の性質を踏まえた合理的な裁量の範囲内であれば認められる。原審が被害者供述等の信用性を判断するために必要な限度で、原々審が検討していないアリバイ供述等の信用性を自ら取り調べた上で差し戻した判断は、裁量の範囲内として是認される。
問題の所在(論点)
少年保護事件の抗告審において、事後審としての性格を有しつつも、抗告裁判所が原々審で検討されていない事実について自ら証拠調べを行い、判断の基礎とすることが、合理的な裁量の範囲内として許容されるか。
規範
少年保護事件における非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定は、家庭裁判所の合理的な裁量にゆだねられている。これと同様に、抗告裁判所による事実の取調べ(少年法32条の6参照)についても、少年保護事件の抗告審としての性質を踏まえ、合理的な裁量により行われるべきものである。
事件番号: 平成20(し)147 / 裁判年月日: 平成20年7月11日 / 結論: その他
強盗致傷の非行事実を認定して少年を中等少年院送致とした家庭裁判所の決定が,抗告審で事実誤認を理由に取り消されて差し戻された場合において,受差戻審の家庭裁判所が検察官の申し出た証拠を取り調べなかった措置は,上記抗告審の決定が,受差戻審に更なる証拠調べを求めたものではなく,上記証拠を取り調べることにより同決定の結論が覆る蓋…
重要事実
少年による強姦未遂保護事件において、第1審(原々審)は検察官を出席させた上で審理し、被害者供述及び少年の自白の信用性に疑いがあるとして不処分決定をした。これに対し検察官が事実誤認を理由に抗告。抗告審(原審)は、原々審の証拠のみでは供述の信用性に関する消極的評価を是認できないとしつつ、最終的な信用性の判断には共犯者のアリバイ供述等の検討が不可欠であると判断。原審は自らアリバイ供述等に関する事実取調べを行った上で、原々決定を取り消し家庭裁判所に差し戻した。
あてはめ
本件では、原々審の証拠関係に照らし、被害者供述等の信用性に対する原々審の評価に疑問が生じている。しかし、それら供述の最終的な信用性を確定させるためには、それと矛盾するアリバイ供述等の信用性を審理し尽くすことが必要不可欠な状況にあった。そうであれば、抗告裁判所が判断の前提として必要な範囲で自らアリバイ供述等の事実取調べを行い、検討を加えることは、適正な非行事実認定を目指す少年保護事件の性質に照らし、合理的な裁量の範囲を逸脱するものとはいえない。
結論
抗告裁判所による事実の取調べ及び判断の在り方は、合理的な裁量の範囲内として是認される。したがって、原々決定を取り消し差し戻した原審の判断は相当である。
実務上の射程
少年審判の抗告審における事実取調べの許容範囲を、家庭裁判所と同様の「合理的な裁量」に委ねる基準を示した。実務上は、原決定の当否を判断するために不可欠な事項であれば、抗告審が自ら証拠調べを行うことが広く認められる根拠となる。答案上は、少年法の事後審的性格と教育的配慮の必要性を調和させる文脈で、裁判所の裁量を肯定する根拠として引用する。
事件番号: 平成1(し)121 / 裁判年月日: 平成2年10月24日 / 結論: 棄却
家庭裁判所は、事実調査のため、捜査機関に対し、補充捜査を促し、又は少年法一六条の規定に基づいて補充捜査を求めることができる。
事件番号: 昭和58(し)77 / 裁判年月日: 昭和58年10月26日 / 結論: 棄却
非行事実の認定に関する証拠調べの範囲、限度、方法の決定は、家庭裁判所の完全な自由裁量に属するものではなく、その合理的な裁量に委ねられたものである。
事件番号: 平成7(し)7 / 裁判年月日: 平成7年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、保護処分が継続中である場合に限り許され、処分終了後には認められない。同規定は少年を将来に向かって保護処分から解放することを目的とするものであり、少年の名誉回復を目的とするものではない。 第1 事案の概要:本件は、既に保護処分が終了した元少年が、保護…
事件番号: 平成9(し)240 / 裁判年月日: 平成10年4月21日 / 結論: 棄却
少年が非行事実の存在を争っている保護事件において、家庭裁判所がその争点について少年法一六条に基づき捜査機関に援助協力を依頼して回答を得ながら、右回答の存在を附添人に了知させなかった措置は、妥当性を欠いたものであるが、右回答は附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したものなどであって、証拠全体の中で重要な位置を占…