4回の覚せい剤譲渡の年月日,場所,相手,量,代金を記載した別表を添付した上,「被告人は,平成14年6月ころから平成16年3月4日までの間,営利の目的で,みだりに,別表記載のとおり覚せい剤を譲り渡すとともに,薬物犯罪を犯す意思をもって,多数回にわたり,大阪市内において,Aほか氏名不詳の多数人に対し,覚せい剤様の結晶を覚せい剤として有償で譲り渡し,もって,覚せい剤を譲り渡す行為と薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡す行為を併せてすることを業とした」旨を記載した公訴事実は,「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」5条違反の罪の訴因の特定として欠けるところはない。
「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」5条違反の罪の公訴事実が多数回にわたり多数人に譲り渡した旨の概括的記載を含んでいても訴因の特定として欠けるところはないとされた事例
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律5条,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律8条2項,刑訴法256条3項
判旨
麻薬特例法5条違反(薬物犯罪収益等収受等)の訴因特定において、構成要件となる「業として」行われた一連の行為を総体として記載し、具体的な譲渡事実を例示的に摘示することは、訴因の特定として適法である。
問題の所在(論点)
麻薬特例法5条違反の罪において、個々の譲渡行為の詳細(日時・場所・相手方等)をすべて網羅的に特定せず、一部を包括的に記載した訴因が、刑事訴訟法256条3項の定める訴因の特定として十分か。
規範
麻薬特例法5条違反の罪は、規制薬物の譲渡等を業とすること等を構成要件とし、一定期間内に業として行われた一連の行為を総体として重く処罰する趣旨である。したがって、訴因の特定においては、処罰対象となる「業」としての活動内容を、期間、場所、方法、相手方等の要素によって、他の犯罪事実と識別可能な程度に特定すれば足りる。
事件番号: 平成16(あ)2554 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: 棄却
規制薬物の譲渡を犯罪行為とする場合における「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」に係る同法11条1項1号の没収及び同法13条1項前段の追徴に当たっては,規制薬物の対価として得た財産から当…
重要事実
被告人は、約1年9ヶ月の間に、営利目的で覚せい剤4回(約0.5g、代金5万円)を特定の相手に譲り渡した事実を別表で明示した。併せて、同期間中に「薬物犯罪を犯す意思をもって、多数回にわたり、氏名不詳の多数人に対し、覚せい剤様の結晶を覚せい剤として有償で譲り渡し」、これらを併せてすることを業としたとして起訴された。
あてはめ
本罪の罪質は、不正利益目的で反復継続される薬物犯罪を総体として禁圧する点にある。本件訴因は、4回の具体的譲渡事実を別表で詳述した上で、それ以外の「多数回」の譲渡も含めて「業」を構成すると記載している。これは、一連の活動を総体として捉える本罪の特性に合致しており、被告人の防御の範囲を画定し、他の事実と識別するのに十分な記載がなされているといえる。
結論
本件公訴事実は、麻薬特例法5条違反の訴因の特定として欠けるところはなく、適法である。
実務上の射程
集合犯的性格を有する犯罪(常習犯や営業犯)の訴因特定に関する重要判例。個別の行為をすべて特定せずとも、主要な事実の例示と活動期間・態様の概括的記載によって、審判対象の識別(識別機能)と防御の範囲(防御機能)が果たされているかという視点で検討する際に引用すべきである。
事件番号: 平成9(あ)804 / 裁判年月日: 平成9年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬特例法8条に規定される「業とした」という文言は、憲法31条が要求する明確性の原則に反してあいまい不明確であるとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は、麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)8条違反の…
事件番号: 平成19(あ)798 / 裁判年月日: 平成21年9月28日 / 結論: 棄却
荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ずに,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察する行為は,検証としての性質を有する強制処分に当たり,検証許可状によることなくこれを行うことは違法である。
事件番号: 平成19(あ)1055 / 裁判年月日: 平成20年4月22日 / 結論: 棄却
薬物犯罪の正犯がその犯罪行為により薬物犯罪収益等を得た場合,当該犯罪行為を幇助したことを理由に幇助犯から当該薬物犯罪収益等を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」11条1項,13条1項により正犯と同様に没収・追徴することはできず,幇助犯…
事件番号: 昭和55(あ)515 / 裁判年月日: 昭和57年2月17日 / 結論: 棄却
一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。