荷送人の依頼に基づき宅配便業者の運送過程下にある荷物について,捜査機関が,捜査目的を達成するため,荷送人や荷受人の承諾を得ずに,これに外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察する行為は,検証としての性質を有する強制処分に当たり,検証許可状によることなくこれを行うことは違法である。
宅配便業者の運送過程下にある荷物について,荷送人や荷受人の承諾を得ずに,捜査機関が検証許可状によることなくエックス線検査を行うことは適法か
刑訴法197条1項,刑訴法218条1項
判旨
宅配業者の運送過程にある荷物に外部からエックス線を照射し内容物の射影を観察する捜査は、プライバシー等を大きく侵害するため、検証としての性質を有する強制処分に当たる。もっとも、令状主義潜脱の意図がなく、捜査の実質的必要性や司法審査の経緯等を総合考慮し、証拠収集過程に重大な違法がないと認められる場合には、その派生証拠の証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
1.宅配便荷物に対する無令状のエックス線検査が、強制処分に当たり違法となるか。 2.先行するエックス線検査に違法がある場合、その派生証拠である覚せい剤等の証拠能力が否定されるか。
規範
1.強制処分(刑訴法197条1項但書)とは、個人の意思に反し、憲法が保障する重要な権利利益を侵害する処分をいう。内容物の形状や品目を相当程度特定し得るエックス線検査は、荷送人・荷受人の内容物に対するプライバシーを大きく侵害するため、検証としての性質を有する強制処分に当たり、検証許可状を要する。 2.違法収集証拠の証拠能力については、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の観点から相当でないと認められる場合には、証拠能力を否定すべきである。
重要事実
警察は、覚せい剤密売の嫌疑がある会社宛ての不審な宅配便荷物について、営業所長の承諾を得て5回にわたり借り出し、無令状でエックス線検査を実施した。検査後、荷物は通常の運送過程に戻された。警察は検査で得られた射影写真等を疎明資料として捜索差押許可状を取得し、本件覚せい剤等を押収した。被告人側は、先行するエックス線検査の違法を理由に、派生証拠である覚せい剤等の証拠排除を主張した。
あてはめ
1.本件検査は、荷物の内容物の形状や材質を詳細に把握し、品目等を相当程度具体的に特定するものである。これは荷送人・荷受人のプライバシーを大きく侵害する行為であり、検証許可状を得ることが可能であったにもかかわらず無令状で行われた点は違法である。 2.もっとも、(1)当時事案解明の実質的必要性が高まっていたこと、(2)現に占有・管理する宅配業者の承諾を得て対象を限定する配慮をしており、令状主義潜脱の意図までは認められないこと、(3)本件覚せい剤等は司法審査を経た捜索差押許可状により取得され、その発付には検査結果以外の資料も提供されていたこと、等の諸事情が認められる。
結論
本件エックス線検査は違法な強制処分であるが、証拠収集過程に重大な違法があるとまではいえず、証拠の重要性等諸般の事情を総合すると、本件覚せい剤等の証拠能力は肯定される。
実務上の射程
エックス線検査の強制処分性を認めた重要判例である。答案では、まず強制処分該当性を論じて違法を導いた上で、違法収集証拠排除法則の枠組み(重大な違法と排除の相当性)に移行し、捜査の必要性や主観的態様を考慮して証拠能力の適否を論じる際のモデルケースとなる。
事件番号: 平成18(あ)1733 / 裁判年月日: 平成19年2月8日 / 結論: 棄却
被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物についても,同許可状に基づき捜索することができる。