薬物犯罪の正犯がその犯罪行為により薬物犯罪収益等を得た場合,当該犯罪行為を幇助したことを理由に幇助犯から当該薬物犯罪収益等を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」11条1項,13条1項により正犯と同様に没収・追徴することはできず,幇助犯から没収・追徴できるのは,幇助行為により得た財産等に限られる。
薬物犯罪の幇助犯から「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」11条1項,13条1項により没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範囲
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律11条1項,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律13条1項,刑法62条1項
判旨
麻薬特例法に基づく没収・追徴は「薬物犯罪収益等を得た者」から行うべきであり、幇助犯は正犯の行為を容易にしたに過ぎず、当然に収益を得たとはいえないため、幇助行為により自ら得た財産の限度で没収・追徴の対象となる。
問題の所在(論点)
麻薬特例法11条1項、13条1項の没収・追徴の規定において、薬物犯罪の幇助犯から正犯が得た収益全額を没収・追徴できるか。それとも幇助犯が自ら得た報酬等の範囲に限られるか。
規範
麻薬特例法11条1項、13条1項に基づく没収・追徴は、薬物犯罪により得られた財産等を「これを得た者」から剥奪することを定めた規定である。幇助犯については、正犯が収益を得たとしても、単に正犯の行為を容易にしたに過ぎず自ら収益を得たとはいえない。したがって、幇助犯から没収・追徴できるのは、幇助犯が薬物犯罪の幇助行為により自ら得た財産等に限られる。
重要事実
事件番号: 平成16(あ)2554 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: 棄却
規制薬物の譲渡を犯罪行為とする場合における「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」2条3項にいう「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産」に係る同法11条1項1号の没収及び同法13条1項前段の追徴に当たっては,規制薬物の対価として得た財産から当…
被告人は、薬物犯罪の正犯による販売行為を容易にする幇助行為を行った。検察官は、本件薬物の売上金(薬物犯罪収益)全額について、正犯だけでなく幇助犯である被告人からも追徴すべきと主張したが、原審は被告人が幇助の報酬として得た金銭の限度で追徴を認めたため、検察官が上告した。
あてはめ
麻薬特例法の規定は、犯罪により得た収益を保持させないことを趣旨とする。本件において、売上金という薬物犯罪収益を実際に得たのは正犯であり、幇助犯は正犯の行為を容易にしたにとどまる。そのため、幇助したことのみを理由に正犯と同様の収益全額を被告人から没収・追徴することは法の文理および趣旨に反する。被告人から没収・追徴できるのは、自らの幇助行為の対価として得た報酬部分のみであると解される。
結論
幇助犯からは、自らが幇助行為により得た財産の限度でのみ没収・追徴が可能である。原判決の判断は正当であり、検察官の上告を棄却する。
実務上の射程
共犯者間における没収・追徴の範囲を画した重要判例である。共同正犯の場合は連帯追徴の法理が妥当し得るが、従属的な立場に過ぎない幇助犯については、現実に得た利得の範囲に限定されることを明示した。答案上は、没収・追徴の対象者を特定する際の解釈指針として活用する。
事件番号: 平成17(あ)660 / 裁判年月日: 平成17年10月12日 / 結論: 棄却
4回の覚せい剤譲渡の年月日,場所,相手,量,代金を記載した別表を添付した上,「被告人は,平成14年6月ころから平成16年3月4日までの間,営利の目的で,みだりに,別表記載のとおり覚せい剤を譲り渡すとともに,薬物犯罪を犯す意思をもって,多数回にわたり,大阪市内において,Aほか氏名不詳の多数人に対し,覚せい剤様の結晶を覚せ…
事件番号: 昭和55(あ)515 / 裁判年月日: 昭和57年2月17日 / 結論: 棄却
一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
事件番号: 平成5(あ)465 / 裁判年月日: 平成6年12月9日 / 結論: 棄却
日本国外で幇助行為をした者であっても、正犯が日本国内で実行行為をした場合には、刑法一条一項の「日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者」に当たる。