公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為は,被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で行われたことなど判示の事実関係の下では,窃盗罪に当たる。
公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為が窃盗罪に当たるとされた事例
刑法235条,刑法254条
判旨
被害者が物品を置き忘れて現場を離れた場合であっても、離脱した距離が約27mと近接しており、時間的にも直後といえる状況下では、被害者の占有は依然として継続しており、当該物品の領得は窃盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
被害者が目的物を置き忘れて現場を離れた場合において、刑法235条の「他人の占有」が認められるか、あるいは遺失物等横領罪(252条)にとどまるか。
規範
占有の有無は、占有の事実(目的物に対する事実的支配)と占有の意思(支配する意思)を、客観的・外見的に観察して判断する。特に一時的な失念や場所的離脱がある場合、離脱した距離の遠近、時間的間隔、場所の状況、物品の形状・性質等を総合考慮し、支配が及んでいるといえるかで決する。
重要事実
被害者は公園のベンチにポシェットを置き忘れ、友人を送るため駅へ向かった。被告人は置き忘れを予期して注視しており、被害者がベンチから約27m離れた歩道橋の踊り場に達した時点で、周囲に人がいない隙を突いてポシェットを持ち去った。被害者は約200m離れた駅改札付近(離脱後約2分)で紛失に気付き、直ちにベンチへ戻った。
あてはめ
被害者はポシェットを一時的に失念していたが、被告人が領得した時点ではベンチから約27mしか離れておらず、場所的・時間的近接性が高い。被告人は被害者の置き忘れを注視しており、被害者の支配が完全に及ばなくなる直前の隙を突いたといえる。このような事実関係の下では、被害者の占有はなお失われておらず、他人の占有する財物といえる。
結論
被告人の行為は窃盗罪(刑法235条)に当たる。
実務上の射程
「占有の離脱」が争われる事案での重要な基準となる。特に「27m」という距離での占有継続を認めた点は、被害者の支配が及ぶ範囲を弾力的に解釈する実務の指針となる。答案では、距離・時間・犯人の注視状況を指摘し、占有の帰属を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和32(あ)2125 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
一 刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であつて、その支配の態様は物の形状その他の具体的事情によつて一様ではないが、必ずしも物の現実の所持または監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以つて足りる。 二 被害者がバスを待つ間に写真機を身辺約三〇糎の個所に置き、行列の移動に連れて改札口…