在留期間更新の申請をした後在留期間を経過した外国人が上記申請を不許可とする決定の通知が発出されたころ以降本邦に残留した行為については,同人において,上記申請に当たり虚偽の申出をしたほか,審査のため入国管理局が求めた出頭要請等にも誠実に対応していないという本件事実関係(判文参照)の下では,上記通知の到達の有無や上記申請が不許可となったことについての同人の認識の有無を問わず,不法残留罪が成立する。
在留期間更新の申請をした後在留期間を経過した外国人が上記申請を不許可とする決定の通知が発出されたころ以降本邦に残留した行為につき不法残留罪が成立するとされた事例
出入国管理及び難民認定法21条,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前のもの)70条1項5号,刑法35条,刑法38条
判旨
在留期間更新申請中に在留期間を経過した場合、申請が不許可とされた時点で不法残留罪が成立し、不許可通知の到達や被告人の認識の有無は罪の成立を左右しない。
問題の所在(論点)
在留期間更新申請が不許可となった場合、不許可通知が本人に到達していない、あるいは不許可の事実を認識していない状況において、在留期間経過後の残留が不法残留罪(入管法70条1項5号)を構成するか。
規範
出入国管理及び難民認定法における不法残留罪(70条1項5号)は、在留期間の更新または変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留することで成立する。在留期間更新申請中に期間が経過した場合、不許可の決定がなされた時点で直ちに不法残留罪が成立し、不許可通知の現実の到達や不許可の事実に関する被告人の認識は、構成要件の充足を左右するものではない。また、特段の事情がない限り、残留についての違法性も阻却されない。
重要事実
パキスタン国籍の被告人は、日本人女性との婚姻に基づき「日本人の配偶者等」の在留資格を得ていたが、夫婦関係の悪化により別居・転居した。被告人は在留期間更新申請において、虚偽の同居事実を記載し、かつ転居後の居住地変更登録を行わなかった。入国管理局は不審を抱き出頭を求めたが、被告人は応じず連絡を絶った。法務大臣は申請を不許可とし、通知を申請上の居住地へ郵送したが、宛先不明で被告人には到達しなかった。被告人はその後も出国せず本邦に残留し、不法残留罪で起訴された。
事件番号: 昭和43(あ)2516 / 裁判年月日: 昭和45年10月2日 / 結論: 棄却
出入国管理令四条一項六号の在留資格により本邦に在留する外国人が、在留期間中二度にわたつて同令二一条による在留期間の更新を申請し、いずれも在留期間経過後に更新許可の通知を受け、更に第三回目の更新を申請し、在留期間経過後に不許可の通知を受けたが、引き続き在留していたため、不法残留者の容疑で身柄を収容された場合には、右更新不…
あてはめ
被告人は在留期間内に更新申請を行っているものの、法務大臣によって不許可の決定がなされた以上、「在留期間の更新を受けないで」期間を経過した状態にある。本罪の成立には、行政処分としての不許可決定がなされれば足り、通知の到達や被告人の認識は不要である。また、被告人は申請時に虚偽の申出を行い、入管当局の調査・出頭要請にも不誠実な対応を続けていた。このような事情の下では、過去の更新実績等を考慮しても、残留を正当化する事情はなく、違法性は阻却されない。したがって、不許可通知の発送日頃以降の残留について不法残留罪が成立する。
結論
被告人に不許可通知が到達しておらず、不許可の事実を認識していなかったとしても、不法残留罪は成立する。
実務上の射程
在留期間更新申請中の在留継続(いわゆる「在留期間の特例」が適用されない旧法下の事案)における罪数・成立時期に関する判断。行政処分の効力発生時期と刑事罰の成否を切り離して考えており、申請者の不誠実な態度が違法性阻却の判断に影響を与える点に留意すべきである。
事件番号: 平成14(あ)1658 / 裁判年月日: 平成15年12月3日 / 結論: 棄却
不法残留を理由に退去強制令書の発付を受けた者が,自費出国の許可を得た後同許可の際指定された出国予定時までの間,身柄を仮放免されて本邦に滞在していた行為についても,不法残留罪が成立する。
事件番号: 昭和53(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和55年3月7日 / 結論: 棄却
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律二条六項は出入国管理令二四条の適用を排除するものではない。