不法残留を理由に退去強制令書の発付を受けた者が,自費出国の許可を得た後同許可の際指定された出国予定時までの間,身柄を仮放免されて本邦に滞在していた行為についても,不法残留罪が成立する。
不法残留を理由に退去強制令書の発付を受けた者が自費出国の許可を得た後同許可の際指定された出国予定時までの間身柄を仮放免されて本邦に滞在していた行為と不法残留罪の成否
出入国管理及び難民認定法52条4項,出入国管理及び難民認定法54条,出入国管理及び難民認定法70条1項5号
判旨
不法残留により退去強制令書の発付を受けた者が、自費出国の許可および仮放免を得て出国待機期間中に本邦に滞在する行為についても、不法残留罪(入管法70条1項5号)が成立する。
問題の所在(論点)
不法残留を理由に退去強制令書の発付を受けた者が、自費出国の許可および仮放免を得て出国待機期間中に本邦に滞在する行為について、入管法70条1項5号の不法残留罪が成立するか。
規範
自費出国の許可および仮放免は、在留期間を更新し、または新たな滞在の権利を付与する法的効果を伴うものではなく、被退去強制者の出国の自由を拘束するものでもない。したがって、これらの処分を受けたとしても、本邦に滞在する法的根拠が遡及的・継続的に発生するわけではなく、不法残留の状態は継続する。
重要事実
被告人は不法残留を理由に退去強制令書の発付を受けたが、自費出国の許可を得た。その後、許可の際に指定された出国予定時までの間(出国待機期間)、身柄を仮放免されて本邦に滞在していた。
事件番号: 平成16(あ)1595 / 裁判年月日: 平成17年4月21日 / 結論: 棄却
在留期間更新の申請をした後在留期間を経過した外国人が上記申請を不許可とする決定の通知が発出されたころ以降本邦に残留した行為については,同人において,上記申請に当たり虚偽の申出をしたほか,審査のため入国管理局が求めた出頭要請等にも誠実に対応していないという本件事実関係(判文参照)の下では,上記通知の到達の有無や上記申請が…
あてはめ
本件において、被告人は退去強制令書の発付を受けており、本来速やかに本邦から退去すべき立場にある。自費出国の許可や仮放免は、人道的な観点や送還の円滑化を目的とした一時的な身柄の解放に過ぎない。これらは在留資格を付与するものではないため、出国待機期間中であっても、被告人が有効な在留資格を有せずに本邦に残留しているという客観的事態に変わりはない。したがって、当該期間中の滞在も不法残留罪の構成要件を充足する。
結論
被告人の出国待機期間中の滞在について、不法残留罪が成立する。
実務上の射程
退去強制手続開始後の恩恵的な措置(仮放免等)が、刑事責任の発生を阻害しないことを明確にした判例である。答案上は、不法残留罪の「残留」の継続性を検討する際や、行政上の処分が刑事罰の構成要件に与える影響(公定力や適法性の判断)が問題となる場面で活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1415 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の日時、場所、方法を詳らかにできない特殊事情がある場合には、審判対象の画定と防御権行使という法の目的を害さない限りの幅のある表示であっても、公訴事実の特定(刑訴法256条3項)に欠けるものではない。 第1 事案の概要:被告人は日本人であるが、昭和29年1月から6月下旬までの間に、有効な旅券に出…
事件番号: 昭和43(あ)2516 / 裁判年月日: 昭和45年10月2日 / 結論: 棄却
出入国管理令四条一項六号の在留資格により本邦に在留する外国人が、在留期間中二度にわたつて同令二一条による在留期間の更新を申請し、いずれも在留期間経過後に更新許可の通知を受け、更に第三回目の更新を申請し、在留期間経過後に不許可の通知を受けたが、引き続き在留していたため、不法残留者の容疑で身柄を収容された場合には、右更新不…