法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限の行使に当たって,取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても,そのことによって直ちに,上記質問又は検査の権限が同法156条に反して犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない。
法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限の行使により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できる場合と同法156条
法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条,法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)154条,法人税法155条,法人税法156条
判旨
行政調査の権限は、犯罪の証拠資料を収集・保全する等、犯則事件の調査・捜査の手段として行使することは許されないが、将来的に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
行政調査(税務調査)において取得された証拠資料が、後に犯則事件の証拠として利用されることが予見可能であった場合に、当該行政調査権限の行使が「犯則事件の調査あるいは捜査の手段」としてなされたものとして、その適法性が否定されるか。
規範
質問・検査等の行政調査権限は、犯則事件の調査または捜査のための手段として行使することは許されない(実質的な目的の逸脱)。もっとも、行政調査権限の行使に当たり、取得される資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことのみをもって直ちに当該権限が犯則事件の調査・捜査の手段として行使された(違法である)と解することはできない。
重要事実
被告人らの法人税法違反事件に関し、税務当局が同法153条ないし155条(改正前)に基づき質問・検査を実施した。原審は、当該調査が犯則事件の調査担当者からの依頼や協力の意図の下に、証拠資料を保全するために行使された可能性を排除できないとして、一面において捜査の手段として行使されたと評したが、証拠能力自体は肯定した。これに対し、本決定では事実関係を再評価した。
あてはめ
本件では、行政調査の権限行使に際して、収集された資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたにとどまる。原判決が指摘した「調査担当者からの依頼」や「協力の意図」を裏付ける具体的な根拠は見当たらない。したがって、将来の証拠利用が想定できたという事情のみでは、行政調査権限を捜査の手段として行使したとみるべき根拠にはならず、権限行使に違法はないと解される。
結論
行政調査権限の行使に違法はなく、収集された証拠資料の証拠能力は肯定される。原判決が一部違法性を認めた点は失当であるが、証拠能力を認めた結論は維持されるべきである。
実務上の射程
行政調査と犯罪捜査の区別に関する重要判例。答案では「行政調査権限の行使が実質的に犯罪捜査を目的として行われたか」を論じる際、単なる「将来の証拠利用の予見可能性」だけでは足りず、具体的・客観的に捜査を代替する目的があったか否かを厳格に判断する際の基準として用いる。
事件番号: 平成19(あ)2014 / 裁判年月日: 平成23年1月26日 / 結論: 棄却
1 会社の代表取締役から実質的に経理担当の取締役に相当する権限を与えられ,会社の決算・確定申告の業務等を統括していた者は,会社から報酬を受けることも日常的に出社することもなかったとしても,法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)164条1項にいう「その他の従業者」に当たる。 2 法人税ほ脱犯において,行為者が…