覚せい剤を船舶によって領海外から搬入する場合における覚せい剤取締法41条の覚せい剤輸入罪は,船舶から領土への陸揚げの時点で既遂に達する。
覚せい剤取締法41条の覚せい剤輸入罪の既遂時期
覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条
判旨
覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、船舶により領海外から搬入する場合、領海内に搬入した時点ではなく、領土への陸揚げの時点で既遂に達すると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
船舶によって覚せい剤を領海外から搬入する場合、覚せい剤取締法41条1項の「輸入」罪が既遂に達する時期はいつか。領海内への進入時点か、あるいは領土への陸揚げ時点か。
規範
輸入罪の既遂時期については、禁制品が本邦の領域内に搬入され、その濫用による保健衛生上の危害発生の危険性が著しく高まった時点を基準として判断すべきである。船舶による搬入の場合、単に領海内に進入しただけでは足りず、領土への陸揚げの時点をもって既遂とするのが相当である。
重要事実
被告人らは、運行を支配する小型船舶を用いて公海上で他の船舶から覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入した。検察官は、昨今の密輸入事犯の頻発、小型船舶の高速化、GPS機器の普及等の情勢を鑑み、領海内に搬入した時点で輸入罪の既遂を認めるべきと主張して上告した。
事件番号: 平成13(あ)93 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤を船舶によって領海外から搬入する場合、覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。 第1 事案の概要:被告人らは、自ら運行を支配する小型船舶を用い、公海上で他の船舶から覚せい剤を受け取った。その後、当該覚せい剤を保持したまま本邦領海内に搬入したものの、陸…
あてはめ
覚せい剤を船舶により搬入する場合、船舶から領土へ陸揚げすることによって、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害発生の危険性が著しく高まるものといえる。検察官が主張する密輸入事犯の増加や船舶の高性能化、国際的取組みの必要性といった諸事情を考慮しても、船舶が領海内に進入したに過ぎない段階では、未だ「輸入」を既遂と評価できるほどの具体的危険性は認められない。
結論
覚せい剤輸入罪は、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。したがって、領海内に搬入したのみで陸揚げに至っていない本件の段階では既遂は認められない。
実務上の射程
船舶による輸入罪の既遂時期を「陸揚げ時」とした従来の判例(最決昭58.9.29)を、GPSの普及等の社会情勢の変化を経た後も維持したものである。論文答案では、輸入罪の実行の着手時期と既遂時期を区別して論じる際に、本判決を根拠として「既遂=陸揚げ時」と明示することになる。航空機による輸入(着陸・着地時)との対比にも留意が必要である。
事件番号: 平成13(あ)275 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、船舶により領海外から搬入する場合、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。公海上で覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入したのみでは、いまだ既遂には至らない。 第1 事案の概要:被告人らは、運行を支配している小型船舶を用いて、公海上で他の船舶から覚せい剤…
事件番号: 平成13(あ)522 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤取締法における輸入罪の既遂時期について、船舶による搬入の場合は領海への進入時点ではなく、領土への陸揚げ時点で既遂に達すると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人らは、小型船舶を用いて公海上で他の船舶から覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入した。検察官は、近年の密輸入事犯の頻…
事件番号: 平成19(あ)2081 / 裁判年月日: 平成20年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤を海上に投下し、これを小型船舶で回収して陸揚げする計画において、投下した覚せい剤を回収できず、その実力的支配下に置く可能性も乏しい段階では、輸入罪の実行の着手は認められない。 第1 事案の概要:被告人らは共犯者と共謀し、外国で覚せい剤を密輸船に積み込み、日本近海まで航行させ、海上に投下した…
事件番号: 昭和33(あ)258 / 裁判年月日: 昭和33年10月6日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項にいう「貨物を輸入」する行為は、海上にあつては、正当な通関手続を経ないで外国貨物を本邦へ陸揚げすることにより既遂となる。