フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかを捜索差押えの現場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるなどの事情の下では、内容を確認せずに右フロッピーディスク等を差し押さえることが許される。
フロッピーディスク等につき内容を確認せずに差し押さえることが許されるとされた事例
刑訴法99条1項,刑訴法218条1項,刑訴法222条1項
判旨
電磁的記録媒体の差押えにおいて、被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められ、かつ、その場で内容を確認すると情報を損壊される危険がある場合には、内容を個別に確認することなく媒体自体を差し押さえることが許される。
問題の所在(論点)
令状に基づく捜索差押えにおいて、電磁的記録媒体の内容を精査することなく、媒体そのものを差し押さえることが刑事訴訟法99条1項及び219条1項の要請(差押えの必要性・関連性)に反しないか。
規範
令状により差し押さえようとするパソコンやフロッピーディスク等の電磁的記録媒体の中に、被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、現場で内容を確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなく当該媒体自体を差し押さえることができる。
重要事実
自動車登録ファイルへの不実記録に係る電磁的公正証書原本不実記録等被疑事件において、捜査機関は「組織的犯行を明らかにするためのパソコン一式、フロッピーディスク」等を差し押さえるべき物とする許可状に基づき、パソコン1台とフロッピーディスク108枚を差し押さえた。当時、これらには組織的背景を裏付ける情報が記録されている蓋然性が高く、かつ申立人らが情報を瞬時に消去するソフトを開発しているとの情報があったため、現場で内容を確認せずに差し押さえが行われた。
事件番号: 昭和43(し)101 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法430条に基づく不服申立てを受けた裁判所は、差押えの必要性の有無についても審査することができる。差押えの必要性は、犯罪の態様や証拠としての価値、被差押者の不利益等を総合考慮し、明らかに必要がないと認められる場合には否定される。 第1 事案の概要:検察官等が行った差押処分に対し、刑事訴訟法…
あてはめ
まず、本件のパソコン等は組織的犯行の裏付け情報が記録されている蓋然性が高いといえる。また、申立人らがデータ消去ソフトを開発しているという事情に鑑みれば、現場での確認作業中に記録を損壊される具体的危険があったと認められる。したがって、関連性の確認を待たずに媒体自体を差し押さえる必要性と緊急性が認められ、法的な許容範囲内にあると評価できる。
結論
本件差押え処分は適法であり、これを是認した原決定は正当である。
実務上の射程
電磁的記録媒体の差押えにおける「現場での選別」の原則に対する例外を示した判例である。現行の刑事訴訟法218条2項(記録媒体を差し押さえる代わりに複写・移送を求める規定)施行前の判決だが、差押えの関連性判断における「蓋然性」と「隠滅の危険」という枠組みは、現代のデジタルフォレンジック捜査における差押えの適法性検討(特に差押えの必要性)においても重要な指標となる。
事件番号: 昭和43(し)100 / 裁判年月日: 昭和44年3月18日 / 結論: 棄却
一 検察官等のした差押に関する処分に対して、刑訴法四三〇条の規定により不服の申立を受けた裁判所は、差押の必要性の有無についても審査することができる。 二 司法警察職員は、事件を検察官に送致した後においては、当該事件につき司法警察職員がした押収に関する処分を取り消しまたは変更する裁判に対して抗告を申し立てることができない…
事件番号: 平成14(し)235 / 裁判年月日: 平成14年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告事件の証拠調べ手続開始後であっても、受訴裁判所に捜索差押えを請求したのでは証拠が隠滅されるおそれがあるなどの例外的な場合には、捜査機関による捜索差押えも許容される。 第1 事案の概要:被告事件の第1審第12回公判期日(証拠調べ手続開始後)において、検察官の請求により裁判官が発付した捜索差押許可…
事件番号: 昭和33(し)20 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法35条が要求する捜索差押令状の明示事項は場所と物であり、罪名の記載にあたり適用法条まで示す必要はない。また、「一切の文書及び物件」との記載も、具体的な例示が付随し、被疑事件との関連性が客観的に明らかであれば、物の明示として有効である。 第1 事案の概要:地方公務員法違反の被疑事件に関し、捜索差…
事件番号: 昭和33(し)16 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
一 憲法第三五条は、捜索、押収については、その令状に、捜索する場所および押収すべき物を明示することを要求しているにとどまり、その令状が正当な理由に基いて発せられたことを明示することまでは要求していないものと解すべく、捜索差押許可状に被疑事件の罪名を、適用法条を示して記載することは憲法の要求するところではない。 二 捜索…