法人税法159条1項(平成10年法律第24号による改正前のもの)に規定する者が,所得の秘匿工作をした上,ほ脱の意思で法人税確定申告書を税務署長に提出しなかった場合,免れた法人税の額は,所得の秘匿工作が行われた部分に限定されるものではなく,その事業年度の所得の金額全額に対する税額になる。
所得の秘匿工作をした上ほ脱の意思で法人税確定申告書を税務署長に提出しなかった場合における免れた法人税の額
法人税法(平成10年法律第24号による改正前のもの)159条
判旨
法人税法159条1項のほ脱罪において、所得秘匿工作を伴う無申告の場合、免れた税額は秘匿部分に限定されず所得全額に対する税額となる。また、事後に一部所得を秘匿した期限後申告がなされても、免れた税額の算定根拠は左右されない。
問題の所在(論点)
所得の秘匿工作を行い、ほ脱の意思で無申告のまま法定納期限を経過させた場合、法人税法159条1項の「免れた法人税の額」はどのように算定されるか。また、事後の期限後申告は税額算定に影響を及ぼすか。
規範
法人税法159条1項(平成10年改正前)に規定する者が、所得の秘匿工作をした上でほ脱の意思に基づき確定申告書を提出しなかった場合、法定納期限の経過により同罪が成立する。この際、「免れた法人税の額」は、秘匿工作が行われた部分に限定されず、当該事業年度の所得全額に対する税額となる。この理は、事後に一部を秘匿した内容の期限後申告がなされた場合でも変わらない。
重要事実
被告人らは、所得の秘匿工作を行った上で、ほ脱の意思をもって法人税確定申告書を法定納期限までに提出しなかった。その後、被告人らは所得の一部を秘匿したままの状態で期限後申告書を提出した。この場合に、免れた税額を「秘匿された所得分」に限定すべきか、それとも「所得全額分」とすべきかが争われた。
事件番号: 平成19(あ)2014 / 裁判年月日: 平成23年1月26日 / 結論: 棄却
1 会社の代表取締役から実質的に経理担当の取締役に相当する権限を与えられ,会社の決算・確定申告の業務等を統括していた者は,会社から報酬を受けることも日常的に出社することもなかったとしても,法人税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)164条1項にいう「その他の従業者」に当たる。 2 法人税ほ脱犯において,行為者が…
あてはめ
本件では、被告人らは法定納期限までに申告を行わず、その前提として所得秘匿工作という不正行為を行っている。この時点で全所得に対する納税義務を免れる危険が発生しており、法定納期限の経過により罪が成立する。したがって、免れた税額は秘匿工作部分だけでなく所得全額に基づくべきである。また、事後の期限後申告は既に成立した犯罪の税額算定を遡及的に変更させるものではなく、たとえ一部所得を申告したとしても、免れた税額がその分減縮されることはない。
結論
法人税法159条1項の罪が成立し、免れた税額は事業年度の所得全額に対する税額となる。事後の期限後申告によって、秘匿された所得分に限定されることはない。
実務上の射程
ほ脱罪における「免れた税額」の算定時期と基準を明確化した判例である。無申告ほ脱の場合、法定納期限経過時の状態を基準とすることを原則とし、事後の補完的な申告による税額の減縮を否定する。答案上は、ほ脱罪の客観的構成要件、特に「免れた税額」の確定において、不正行為の有無と申告の有無をセットで検討する際に用いる。
事件番号: 平成8(あ)963 / 裁判年月日: 平成9年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人税法159条1項に規定される脱税罪の構成要件である「偽りその他不正の行為」という文言は、憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反するほど曖昧なものではない。 第1 事案の概要:被告人合資会社A、被告人B及び被告人Cが、法人税法違反(脱税)の罪に問われた事案である。被告人側は、同法159…
事件番号: 昭和60(あ)1528 / 裁判年月日: 昭和63年9月2日 / 結論: 棄却
所得秘匿工作をしたうえ逋脱の意思で会社臨時特別税確定申告書を税務署長に提出しなかつた場合、会社臨時特別税法二二条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たるのは、所得秘匿工作を伴う不申告の行為であり、また、その判示に当たつては、右の行為があつたことを摘示すれば足り、所得秘匿工作の具体的な日時、場所、方法などについては摘示…
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【結論(判旨の要点)】不動産取引の相手方である法人の代表者個人に対し、謝礼等の趣旨で支出された金員は、租税特別措置法上の「交際費等」に該当する。 第1 事案の概要:被告会社は、数十億円規模の不動産取引の相手方となった株式会社の代表取締役に対し、(1)個人的利得とするための謝礼として現金7500万円を手交し、(2)個人的…