北海道内の高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において,(1)走行中の自動車が上記道路に侵入したキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではないこと,(2)金網の柵を地面との透き間無く設置し,地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず,そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであること,(3上記道路には動物注意の標識が設置されていたことなど判示の事情の下においては,上記(2)のような対策が講じられていなかったからといって,上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえない。
北海道内の高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において,小動物の侵入防止対策が講じられていなかったからといって上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえないとされた事例
国家賠償法2条1項
判旨
高速道路へのキツネの侵入により自損事故が発生した場合、小動物との接触による死傷の危険性は高くなく、適切な運転操作で回避可能であることから、侵入防止対策の欠如のみをもって営造物の瑕疵があるとはいえない。
問題の所在(論点)
高速道路にキツネが侵入し得る状態にあったことが、国家賠償法2条1項にいう「設置又は管理の瑕疵」にあたるか。
規範
国家賠償法2条1項の「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、その有無は、事故当時の営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきである。
重要事実
北海道の高速道路で、運転者Aが中央分離帯から飛び出したキツネを避けようとして自損事故を起こし、後続車に衝突され死亡した。現場付近ではキツネの接触死が頻発しており、過去に別の区間でキツネを避けたことによる死亡事故も1件発生していた。道路には柵が設置されていたが小動物が通り抜ける隙間があり、管理者の内部資料にはより万全な侵入防止策が示されていた。一方で、現場には「動物注意」の標識が設置されていた。
あてはめ
まず、キツネ等の小動物との接触自体で運転者が死傷する危険性は高くなく、通常は適切な運転操作により回避を期待できる。本件区間でもキツネの接触死は多いが死傷事故はほぼ皆無であった。次に、内部資料の対策が全国的に普及していた事情はなく、多額の費用を要する。さらに、「動物注意」の標識による注意喚起もなされていた。これらを総合すると、徹底した侵入防止策を講じていなくとも通常有すべき安全性を欠くとはいえない。
結論
本件道路に設置又は管理の瑕疵があったとみることはできず、国(管理者)は賠償責任を負わない。
実務上の射程
営造物責任における「通常有すべき安全性」の判断において、被害の発生可能性(危険性の程度)や回避可能性、対策の困難性(費用対効果)、代替的な注意喚起の有無を総合考慮する実務上の枠組みを示す典型例である。
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