ホステスの業務に関する報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合において,所得税法施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は,ホステスの実際の稼働日数ではなく,当該期間に含まれるすべての日数を指す。
ホステスの業務に関する報酬の額が一定の期間ごとに計算されて支払われている場合における,所得税法施行令322条にいう「当該支払金額の計算期間の日数」の意義
所得税法204条1項6号,所得税法205条2号,所得税法施行令322条
判旨
所得税法施行令322条にいう「計算期間の日数」とは、支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解される。したがって、ホステスの報酬が一定期間ごとに計算されている場合、その控除額の算出に用いる日数は、実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれる全日数(カレンダー上の日数)を指す。
問題の所在(論点)
ホステス報酬の源泉所得税額の算定において、所得税法施行令322条が規定する控除額の算出基礎となる「当該支払金額の計算期間の日数」が、報酬集計期間の「全日数」を指すのか、それとも「実際の出勤日数」を指すのかが問題となった。
規範
所得税法205条2号及び所得税法施行令322条に規定される「当該支払金額の計算期間の日数」とは、文言の自然な解釈として、支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った期間を指す。租税法規はみだりに文言を離れて解釈すべきではなく、還付の手数を省くという基礎控除方式の趣旨に照らしても、実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれるすべての全日数を指すと解するのが相当である。
重要事実
パブクラブを経営する上告人らは、ホステスに対し、半月ごとの集計期間(1日〜15日、16日〜末日)を定め、勤務時間数等に基づき算出した報酬を支払っていた。上告人らは、源泉所得税の計算にあたり、所得税法施行令322条所定の控除額を「5000円×集計期間の全日数」として計算し納付した。これに対し税務署長(被上告人)は、控除額の計算に用いる日数は「実際の出勤日数」に限られるとして、納税告知及び不納付加算税の賦課決定を行った。
事件番号: 平成29(行ヒ)209 / 裁判年月日: 平成30年9月25日 / 結論: 棄却
給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について,法定納期限が経過したという一事をもって,当該源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとはいえない。
あてはめ
一般に「期間」とは時的連続性を持った概念である。本件において、上告人らは各集計期間ごとに1回に支払う報酬額を計算している。原審は実質的な必要経費の発生に近似させるべきとして出勤日数と解したが、租税法規の文言解釈を離れるものであり、かつ還付事務の簡素化という立法趣旨にも反する。したがって、本件における「計算期間の日数」は、報酬計算の単位となっている各集計期間の初日から末日までの全日数と評価される。
結論
所得税法施行令322条の「計算期間の日数」は、実際の稼働日数ではなく、当該期間に含まれる全日数を指す。よって、全日数に基づき控除額を算出した上告人らの計算は正当であり、実際の出勤日数に基づき納税告知等を行った処分は違法として、原判決は破棄・差し戻されるべきである。
実務上の射程
租税法規の文言解釈の原則(文理解釈重視)を示す重要判例。実務上は、ホステス報酬等で「期間」を単位として支払われる報酬の源泉徴収において、不連続な稼働実態にかかわらず、期間の全日数を基礎に控除額を機械的に算定できることを確定させた。答案では、行政による課税要件の拡張解釈を否定し、法的安定性を重視する場面で引用可能。
事件番号: 昭和38(オ)695 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
審査決定の通知書が審査の請求人に郵便をもつて配達された日は、所得税法(昭和三七年法律第六七号による改正前)第五一条第二項が出訴期間の起算日とする「審査の決定に係る通知を受けた日」にあたる。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
事件番号: 平成11(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成16年7月20日 / 結論: 破棄自判
法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして…
事件番号: 平成26(行ヒ)167 / 裁判年月日: 平成27年10月8日 / 結論: 破棄差戻
権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,① 同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②…