遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において,弁償すべき額につき当事者間に争いがあり,受遺者が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思がある旨を表明して,弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは,受遺者においておよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り,上記訴えには確認の利益がある。
遺留分減殺請求を受けた受遺者が,民法1041条所定の価額を弁償する旨の意思表示をしたが,目的物の現物返還請求も価額弁償請求も受けていない場合において,受遺者の提起した弁償すべき額の確定を求める訴えに確認の利益があるか
民法1041条1項,民訴法134条
判旨
遺留分減殺請求権を行使した遺留分権利者が、受遺者等に対して、減殺の対象とされた特定の財産につき、持分権の移転登記手続等の請求に加え、将来の当該財産の確定を条件としてその引渡しや金銭支払を求める「予備的請求」を行うことは、訴えの利益が認められ適法である。
問題の所在(論点)
遺留分減殺請求に伴う現物返還請求において、相手方が価額弁償の意思表示をしたが現実に弁償がなされていない段階で、将来の確定を条件として返還を求める訴えに訴えの利益が認められるか。
規範
遺留分減殺請求権が行使されると、減殺の対象となった贈与・遺贈は効力を失い、目的物の権利は当然に遺留分権利者に帰属する。減殺の効力が生じている以上、遺留分権利者が受遺者等に対し、目的物の返還を請求し、将来これが行使された場合に備えてあらかじめ給付を求めることは、将来の給付の訴えとして必要性・相当性が認められる。また、価額弁償(民法1041条1項)の抗弁がなされた場合であっても、それが現実に履行されるまでは現物返還義務は消滅しないため、現物返還を求める利益は失われない。
重要事実
遺留分権利者であるXは、被相続人から全財産の遺贈を受けた受遺者Yに対し、遺留分減殺請求権を行使した。Xは、主位的請求として現物返還(持分移転登記等)を求めた。これに対し、Yは価額弁償の意思表示をしたが、現実に金銭の支払はなされていなかった。Xは、Yによる将来の価額弁償がなされない場合に備え、予備的に、目的物たる不動産の明渡しや賃料相当損害金の支払を請求した。原審は、価額弁償の意思表示により現物返還請求は不適法になると判断した。
あてはめ
遺留分減殺により、対象物件の持分権は当然にXに帰属する。Yは価額弁償の意思表示をしたが、これは現実に弁償がなされない限り現物返還義務を消滅させるものではない(民法1041条1項の趣旨)。したがって、Xが現物返還を求める法的地位は依然として存続している。また、将来の価額弁償の成否によって結論が左右される不安定な状態において、あらかじめ条件付きで引渡し等を求めておくことは、紛争の一回的解決を図る手段として適切であり、将来の給付の訴えを提起する「あらかじめ請求する必要」(民訴法135条)があるといえる。
結論
将来の確定を条件とする現物返還等の予備的請求は、訴えの利益を欠くものではなく、適法である。したがって、これを受理しなかった原審判決は破棄を免れない。
実務上の射程
受遺者が価額弁償の意思表示をしたが、現実に金銭を支払っていない(あるいは支払能力に疑問がある)事案において、遺留分権利者が「現物」を確保するための訴訟構成として本判例を活用すべきである。また、将来の給付の訴えの要件論(民訴法135条)を論じる際の有力な材料となる。
事件番号: 平成6(オ)1746 / 裁判年月日: 平成9年2月25日 / 結論: その他
減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的である不動産の持分移転登記手続を求める訴訟において、受遺者が、事実審口頭弁論終結前に、裁判所が定めた価額により民法一〇四一条の規定による価額の弁償をする旨の意思表示をした場合には、裁判所は、右訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上、受遺者が右の額を支払…
事件番号: 昭和30(オ)95 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: その他
遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。
事件番号: 平成12(受)375 / 裁判年月日: 平成13年11月27日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,売主は民法565条の類推適用を根拠として代金の増額を請求することはできない。
事件番号: 昭和32(オ)834 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公正証書に記載された債務額が、その後の合意等により減額された場合であっても、当該公正証書は減額された範囲内において実体的真実に合致し、執行力を保有し続ける。 第1 事案の概要:債務者である上告人らは、講の管理人である被上告人との間で、掛戻金76万8000円について公正証書を作成した。その後、諸般の…