学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,当該学校において生徒が受ける教育全体の中での当該教育内容や指導方法の位置付け,当該変更の程度,当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,当該変更が,学校設置者や教師に教育内容や指導方法の変更につき裁量が認められることを考慮してもなお,社会通念上是認することができないものである場合に限られる。
学校による生徒募集の際に説明,宣伝された教育内容や指導方法の一部が変更され,これが実施されなくなったことが,親の期待,信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成する場合
民法709条
判旨
私立学校が特定の教育内容を説明・宣伝して生徒を募集した場合、その内容を期待して入学した生徒や保護者との関係において、教育内容の一部変更が直ちに不法行為(民法709条)上の違法性を有するとは限らないが、教育の核心的部分が失われ、期待された利益が著しく損なわれた場合には、信義則上、不法行為を構成し得る。
問題の所在(論点)
学校が募集時に説明・宣伝していた特定の教育内容を変更したことが、生徒・保護者の期待や信頼を侵害するものとして、不法行為(民法709条)上の違法性を認めることができるか。
規範
学校教育の内容や方法は、性質上、専門的判断に基づく裁量があり、社会情勢や教育上の必要性から変更され得るものである。したがって、当初の説明や宣伝と異なる教育が実施されたとしても、それだけで直ちに不法行為となるものではない。しかし、特定の教育内容が当該学校の特色として強調され、生徒・保護者がそれを信頼して入学を選択したという事情がある場合において、変更が教育の目的・内容の核心部分に関わり、説明等によって生じた期待や信頼を著しく損なうといえるときは、信義則上の義務に違反するものとして、不法行為上の違法性を認めるのが相当である。
重要事実
私立中学校であるY学校は、独自の「道徳教育」を特色として掲げ、特定の講師を「教育長」として招へいし、その指導に基づく独自のカリキュラムや指導法をパンフレット等で強力に宣伝し、生徒を募集していた。これに共感した生徒・保護者Xらは、この教育を受けることを目的として入学した。しかし、入学後まもなくYは方針を転換して教育長を解任し、独自の道徳教育を廃止して一般的な内容に変更した。これに対しXらが、期待していた教育を受ける権利を侵害されたとして損害賠償を求めた。
あてはめ
Y学校の道徳教育は、募集パンフレット等で大きく扱われ、入学動機の形成に重要な役割を果たしており、Xらはその継続を強く期待していたといえる。しかし、本件の教育内容の変更は、道徳教育の手法や担当者の変更にとどまっており、教育内容のレベルが著しく低下したとまでは認められない。教育課程の編成には学校側の裁量があり、特定の講師による教育が永続されることまでが法的保護の対象となる期待であったとはいえない。また、教育全体の目的が完全に喪失したとまでは断じられず、社会通念上受忍すべき限度を超えて、信義則上容認できないほどの期待の侵害があったとまでは認められない。
結論
教育内容の変更は不法行為上の違法性を具備するものとは認められず、Xらの損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
私立学校の教育内容変更に関する期待権の侵害について、その違法性判断に「教育の核心部分の維持」や「裁量権の範囲」という枠組みを示した。
事件番号: 平成20(受)981 / 裁判年月日: 平成21年4月28日 / 結論: 破棄自判
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