更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,管財人又は更生会社が,顧客に対し,過払金返還請求権が発生している可能性があることやその届出をしないと更正会社がその責めを免れることにつき注意を促さず,保全管理人が上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告を新聞に掲載したなど判示の事情があったとしても,信義則に反するものではなく,権利の濫用にも当たらない。
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することが,信義則に反せず,権利の濫用にも当たらないとされた事例
民法1条2項,民法1条3項,旧会社更生法(平成14年法律第154号による改正前のもの)241条,会社更生法204条1項
判旨
会社更生手続において、管財人等が過払金返還請求権の発生可能性や失権の注意喚起を講じなかったとしても、更生計画に定めのない債権が失権した旨を会社側が主張することは、信義則違反や権利濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
更生会社(管財人)が債権者に対し、過払金債権の発生可能性や不届出による失権の法的効果を告知・注意喚起しなかった場合において、会社側が失権の効力を援用することが信義則違反または権利の濫用にあたるか。
規範
更生計画認可により、計画に定めのない更生債権が失権する効力(旧会社更生法241条、現行204条1項本文)は更生手続の根本原則である。手続の迅速・画一的処理の必要性に鑑みれば、管財人等が届出のない債権の存在を認識し、又は容易に認識し得たとしても、特段の注意喚起措置を講じなかったことを理由に失権の主張を妨げることは、法の予定するところではない。したがって、特段の事情がない限り、失権の主張が信義則に反し、又は権利の濫用に当たることはない。
重要事実
事件番号: 平成21(受)138 / 裁判年月日: 平成21年9月11日 / 結論: 棄却
貸金業者が,借主に対し,元利金の支払を怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下に金銭の貸付けを行い,借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領する都度,弁済金を遅延損害金と残元本の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を送付していた場合であっても,次の(1)〜(4)など判示の事情の下においては,貸金業…
貸金業者である被上告人は、多数の過払金債権者が存在する状況で更生手続を開始した。保全管理人は会員の脱会防止目的で「これまで通り使える」旨の新聞社告を掲載したが、過払金の発生や届出の必要性に関する注意喚起は行わなかった。上告人ら顧客は届出期間内に過払金債権の届出をせず、更生計画認可により失権の効力が発生した。上告人らは、被上告人による失権の主張は信義則違反・権利濫用であると主張した。
あてはめ
まず、管財人等が過払金の発生可能性や失権の法的効果につき特に注意喚起を行わなかった点は、迅速・画一的な処理を旨とする会社更生法の趣旨に照らし、失権の主張を妨げる理由とはならない。次に、新聞社告は会社再建目的で不当とはいえず、その内容も届出が不要であるとの誤解を与えるものではないから、届出を妨げたとは評価できない。また、過払金債権者が僅少であったことが早期再建に寄与した等の事情も、上記判断を左右しない。したがって、失権の主張が信義則に反し権利の濫用に当たるような特段の事情は認められない。
結論
被上告人が上告人らの過払金返還請求権の失権を主張することは、信義則に反せず、権利の濫用にも当たらない。
実務上の射程
会社更生(及び民事再生)における失権の効力の強力さを認めた判例である。債権者側から信義則による突破を試みる際のハードルは極めて高く、管財人の懈怠や不適切な言動が、単なる告知不足を超えて「届出を積極的に妨害した」といえるレベルの特段の事情がない限り、失権を免れることは困難である。
事件番号: 平成26(受)1817 / 裁判年月日: 平成27年6月1日 / 結論: 破棄差戻
債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができる。
事件番号: 平成21(受)247 / 裁判年月日: 平成21年11月9日 / 結論: 破棄自判
民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…