継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。 (反対意見がある。)
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法703条,利息制限法1条1項
判旨
利息制限法所定の制限を超える利息の支払により生じた過払金を、その後に発生する新たな借入金債務に充当することは、特段の事情がない限り、認められない。
問題の所在(論点)
利息制限法超過の支払により発生した過払金は、その後に発生した別個の借入金債務に対して、特段の合意がない場合でも当然に充当されるか。
規範
同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けと弁済が繰り返される利息制限法超過の過払金について。特段の事情(例えば過払金を新たな借入金に充当する旨の合意など)がない限り、一つの借入金債務の弁済により生じた過払金が、当然にその後の別の借入金債務に充当されることはない。過払金返還請求権と新たな借入金債務は別個の債権債務であり、当然の充当を認める法的根拠は存在しないためである。
重要事実
1. 貸主と借主の間で、利息制限法を超える利率での継続的な金銭消費貸借(カードキャッシング等の基本契約)が行われていた。2. 借主は、ある時点での借入金を完済した際、制限超過利息の支払により計算上「過払金」が発生している状態にあった。3. その後、借主は再度同一の貸主から新たな借入を行った。4. 借主は、既発生の過払金が新たな借入金債務の元本に当然に充当され、その分だけ債務が消滅していると主張した。
事件番号: 平成22(受)1983 / 裁判年月日: 平成25年4月11日 / 結論: 破棄差戻
継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む場合には,別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り,まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し,次いで過…
あてはめ
1. 本件において、過払金が発生した時点の借入債務と、その後に発生した借入債務は、原因となる借入れが別個に行われている。2. 過払金返還請求権は不当利得返還請求権(民法703条)の性質を有し、法律上当然に発生するものである。3. 一方、新たな借入金債務は契約に基づき発生するものであり、両者を当然に相殺・充当させる仕組みは、民法上の相殺の要件を欠く限り認められない。4. 当事者間に「過払金を将来の債務に充当する」旨の明確な合意等の特段の事情も認められないため、既発生の過払金は新たな債務を消滅させるものではないといえる。
結論
過払金が新たな借入金債務に当然に充当されるとの主張は認められず、過払金返還請求権と借入金債務は各々別個に存続する。
実務上の射程
本判決(最一小判昭和52年6月20日)は、その後の平成19年判決等で「一連の計算」が認められる前の過渡的な判断であるが、基本原則として「合意なき当然充当」を否定した点で重要である。
事件番号: 昭和40(オ)1089 / 裁判年月日: 昭和44年5月27日 / 結論: 破棄差戻
最高裁昭和四一年(オ)第一二八一号、同四三年一一月一三日大法廷判決、民集二二巻一二号二五二六頁と同旨。
事件番号: 平成12(受)1000 / 裁判年月日: 平成15年9月11日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合…
事件番号: 平成24(受)2832 / 裁判年月日: 平成26年7月24日 / 結論: 破棄差戻
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定の毎月の返済額を超過する額の支払がされたときには,当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する債務に充当されることは…
事件番号: 平成21(受)955 / 裁判年月日: 平成22年4月20日 / 結論: 破棄差戻
1 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合における利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,各借入れの時点における従前の借入金残元本と新たな借入金との合計額をいい,従前の借入金残元本の額は,弁済金のうち制限超過部分があ…