1 貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合と甲の受ける利息等の割合との合計は乙を設立する以前に甲が受けていた利息等の割合とほぼ同程度であったこと,乙は甲の貸付けに限って保証しており,甲から手形貸付けを受ける場合には乙の保証を付けることが条件とされていること,乙は,保証委託契約の締結業務及び保証料の徴収業務を甲に委託しており,信用保証契約の締結に際しても独自の審査を行っておらず,甲が債権回収のための訴えの提起を行っていたことなど判示の事実関係の下においては,乙の受ける保証料等は,甲の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たる。 2 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務の利息及び元本に充当され,当該他の借入金債務の利率が利息制限法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができない。
1 信用保証会社の受ける保証料及び事務手数料が貸金業者の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たるとされた事例 2 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払ったことによって生じた過払金と他の借入金債務への充当
利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法3条,民法136条2項,民法488条,民法489条,民法491条
判旨
基本契約に基づく継続的金銭消費貸借取引において生じた過払金は、特段の事情のない限り、当然に他の借入金債務の元利金に充当される。また、貸主が設立した子会社に支払われる保証料が、実態として利息の受領と同視できる場合には、利息制限法上の「みなし利息」に該当する。
問題の所在(論点)
1. 貸主の連結子会社に対して支払われた保証料等が、利息制限法3条の「みなし利息」に含まれるか。 2. 継続的取引において生じた過払金が、他の借入金債務に対して当然に充当されるか。
規範
1. 債権者がその便宜のために設立した子会社等に借主が支払う保証料等は、実態において債権者が受領する利息と異ならないと認められる特段の事情がある場合、利息制限法3条のみなし利息に当たる。 2. 同一の基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される取引において、一の借入金につき発生した制限超過利息(過払金)は、特約のない限り、民法489条・491条の規定に従い、弁済当時存在する他の借入金債務の元利金に当然に充当される。
重要事実
塗装業を営む上告人A1は、被上告人(貸主)との間で極度額1000万円の継続的手形貸付契約を締結した。被上告人は100%出資の子会社であるF信用保証を設立し、A1に対しF社との保証委託契約を融資の条件としていた。F社は独自審査を行わず、被上告人が業務を代行し、保証料と貸付利率の合計はF社設立前の利息と同程度であった。A1らが利息制限法を超える利息及び保証料を支払った結果、一部の貸付について過払金が生じたが、被上告人は各貸付けは別個であるとして他の貸付債務への充当を否定した。
あてはめ
1. F社は被上告人の100%子会社であり、役員の兼任や本店所在地の重複、業務の全面的委託、独自審査の欠如といった実態に照らせば、F社の受ける保証料等は実質的に被上告人が受ける利息等と別個のものとはいえず、みなし利息に当たる。 2. 本件取引は基本契約に基づく継続的なものであり、借主の合理的意思として過払金による他債務の消滅を期待するのが通常である。したがって、充当に関する特約等の特段の事情がない限り、既発生の過払金は他の借入金債務の元利金に充当されるべきである。
結論
1. F社に支払われた保証料等はみなし利息に当たり、制限超過分は元本に充当される。 2. 過払金は他の借入金債務に充当され、その結果債務が消滅していれば、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求が認められ得る。
実務上の射程
過払金返還請求訴訟における「一連計算(当然充当)」の法的根拠を示す重要判例である。複数の借入れを一つの債権債務関係として合算して計算できるため、過払金の額や消滅時効の起算点(取引終了時)の判断に直結する。答案では、基本契約の存在を指摘した上で、過払金発生時に他の債務が存在すれば当然に充当される旨を論じる。
事件番号: 平成21(受)1192 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: 棄却
いわゆる過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合においても,悪意の受益者である貸主は過払金発生の時から民法704条前段所…
事件番号: 平成14(受)622 / 裁判年月日: 平成15年9月16日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合…
事件番号: 平成23(受)122 / 裁判年月日: 平成24年9月11日 / 結論: 破棄差戻
同一の貸主と借主との間で無担保のリボルビング方式の金銭消費貸借に係る基本契約に基づく取引が続けられた後,改めて不動産に担保権を設定した上で確定金額に係る金銭消費貸借契約が締結された場合において,第2の契約に基づく借入金の一部が第1の契約に基づく約定残債務の弁済に充てられ,借主にはその残額のみが現実に交付されたこと,第1…
事件番号: 平成20(受)543 / 裁判年月日: 平成21年3月3日 / 結論: 破棄自判
継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限…