いわゆる持株会が採用した株式譲渡ルールに従い,株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意は,次の(1)〜(4)などの判示の事情の下では,会社法107条及び127条の規定に反するものではなく,公序良俗にも反せず,有効である。 (1) 上記株式譲渡ルールは,日刊新聞の発行を目的とし,日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると規定して,株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に,これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものである。 (2) 非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく,上記株式譲渡ルールにおいては,従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていた。 (3) 当該従業員は,上記株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けた。 (4) 当該会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情はない。
株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
会社法107条,会社法127条,民法90条,(日刊新聞法)日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1条
判旨
非公開会社の従業員持株会において、退職時等に額面価格での売戻しを義務付ける合意は、譲渡制限制度の趣旨や取得経緯に照らし合理性がある限り、会社法の株式譲渡自由の原則や公序良俗に反せず有効である。
問題の所在(論点)
従業員持株会の規約に基づく「額面額による売戻合意」が、株式譲渡自由の原則(会社法107条、127条)や公序良俗(民法90条)に反し無効とならないか。
規範
株主と持株会との間で、株主が資格を喪失した際等に額面額で株式を買い戻す旨の合意(以下「売戻合意」)の効力は、①制度の目的、②株式の市場性の有無、③取得価格と売渡価格の均衡、④株主の意思の自由、⑤配当状況等の事情を総合考慮し、その合理性と相当性が認められる場合には、株式譲渡自由の原則(会社法127条等)や公序良俗に反せず有効である。
重要事実
日刊新聞法に基づき譲受人を事業関係者に限定する非公開会社において、従業員持株会(Y)が「入会時は1株100円(額面)で譲渡し、退職時等は同額で買い戻す」というルールを運用していた。従業員であったXは、このルールを認識した上で自由意思に基づき計2740株を取得し、売戻合意を締結した。その後、Xが第三者へ1株1000円での譲渡を試み、会社が承認を拒絶した際、Yが合意に基づき額面額での買戻しを主張したため、Xが合意の無効を訴えた。
あてはめ
①目的:社員株主制度を維持しつつ、譲渡制限株式を円滑に現役従業員へ承継させるもので合理性がある。②市場性:非公開会社であり元々市場性がない。③価格の均衡:取得時も譲渡時も額面額であり、将来の譲渡益を期待できない反面、損失を被るおそれもない。④自由意思:Xは内容を認識した上で自由意思で取得しており、強制された事情はない。⑤配当:多額の利益を不当に留保して配当を行わない等の事情もない。したがって、本件合意は有効である。
結論
本件売戻合意は会社法107条、127条および公序良俗に反せず有効であり、Xは合意に従う義務を負う。
実務上の射程
持株会等における「額面買戻し条項」の有効性を判断するリーディングケースである。特に「入るときも出るときも額面」という価格の対称性と、制度の目的が社員株主制度の維持にある点が重要視される。答案上は、株式譲渡自由の原則に対する例外的な制限が認められる考慮要素として活用すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)231 / 裁判年月日: 昭和42年11月17日 / 結論: 棄却
他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がされた場合においては、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となるものと解すべきである。
事件番号: 平成6(オ)857 / 裁判年月日: 平成10年12月17日 / 結論: 棄却
金員の着服を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、右着服金員相当額の不当利得返還請求がその時効期間経過後に追加された場合、両請求が、基本的な請求原因事実を同じくする請求であり、着服金相当額の返還を請求する点において経済的に同一の給付を目的とする関係にあるなど判示の事情の下においては、不法行為に基づく損害賠…
事件番号: 昭和27(オ)237 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造であるときは、譲受人がたとい善意無過失であつても、改正前の商法第二二九条第一項又は第五一九条の準用がない。