特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,同項に基づく秘密保持命令の申立てをすることが許される。
特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件において特許法105条の4第1項に基づく秘密保持命令の申立てをすることの許否
特許法100条1項,特許法105条の4第1項,民事保全法23条2項
判旨
特許法105条の4第1項にいう「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」には、特許権等の侵害差止めを求める仮処分事件も含まれる。秘密保持命令制度の趣旨は、営業秘密の流出を恐れて当事者が主張立証を尽くせない事態を回避することにあり、この必要性は本案訴訟と共通するためである。
問題の所在(論点)
特許法105条の4第1項に規定する秘密保持命令の対象となる「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に、侵害差止めを求める仮処分事件が含まれるか(「訴訟」の意義)。
規範
特許法105条の4第1項に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」には、特許権等の侵害差止めを求める仮処分事件も含まれると解する。特許法において「訴訟」の文言は民事保全事件を含むものとして用いられる例がある(同法54条2項等)上、秘密保持命令の制度趣旨である「当事者の主張立証の十全な遂行と営業秘密の保護の両立」を図る必要性は、仮処分事件においても本案訴訟と同様に認められるからである。
重要事実
債権者Aが、抗告人による液晶テレビ等の輸入販売等が自らの特許権を侵害すると主張して、その差止め等を求める仮処分を申し立てた。抗告人は、当該事件の審尋期日で提出を予定している準備書面等に自らの営業秘密が記載されているとして、Aの代理人らに対し、特許法105条の4第1項に基づき秘密保持命令の発令を申し立てた。原審は、「訴訟」に仮処分事件は含まれないとして申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した。
事件番号: 令和5(許)9 / 裁判年月日: 令和5年10月6日 / 結論: 破棄差戻
1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合に、当該債権者において当該一部分について分筆の登記の申請をすることができない又は著しく困難であるなどの特段の事情が認められるときは、当該仮処分命令は、当該土地の全部…
あてはめ
仮処分事件は、命令の必要性の有無という独自の争点はあるものの、それ以外の点では本案訴訟と争点を共通にしている。そのため、営業秘密を保有する当事者が、相手方による目的外使用や第三者への開示による事業上の支障を危惧し、秘密の顕出を控えることで十分な主張立証ができなくなるという事態は、仮処分事件においても本案訴訟と同様に生じ得る。また、秘密保持命令の申立てを認めたとしても、迅速な処理を要する仮処分事件の性質に反するとはいえない。したがって、本件仮処分事件においても秘密保持命令の申立ては許されると評価すべきである。
結論
本件仮処分事件は特許法105条の4第1項の「訴訟」に該当し、秘密保持命令の申立てが可能であるため、原決定を破棄し原々決定を取り消す。
実務上の射程
特許侵害訴訟の付随申立てとしての秘密保持命令が、民事保全手続においても準用なしに直に認められることを示した。答案上は、保全手続における手続保障や主張立証の重要性を説く文脈で、同条の「訴訟」を広く解釈する根拠として活用できる。
事件番号: 平成11(許)20 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: その他
一 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。 二 民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業…
事件番号: 平成10(ク)699 / 裁判年月日: 平成11年3月12日 / 結論: 棄却
高等裁判所のした保全抗告についての決定は、許可抗告の対象となる。
事件番号: 平成27(許)15 / 裁判年月日: 平成28年3月18日 / 結論: 棄却
建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として,民事保全法53条又は55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることはできない。
事件番号: 平成11(許)36 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 却下
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しない。