警察官が私費で購入したノートに記載し,一時期自宅に持ち帰っていた本件取調べメモについて,同メモは,捜査の過程で作成され,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易な証拠であり,弁護人の主張(判文参照)と同メモの記載の間には一定の関連性が認められ,開示の必要性も肯認できないではなく,開示により特段の弊害が生じるおそれも認められず,その証拠開示を命じた判断は結論において是認できる。 (補足意見及び反対意見がある。)
警察官が私費で購入したノートに記載し,一時期自宅に持ち帰っていた取調べメモについて,証拠開示を命じた判断が是認された事例
刑訴法316条の17第1項,刑訴法316条の20,刑訴法316条の26第1項
判旨
警察官が職務上作成し保管する取調べメモは、検察官が入手容易であれば証拠開示命令の対象となり、供述の変遷が争点となる場合には関連性と必要性が認められる。
問題の所在(論点)
警察官が私費で購入したノートに記された取調べメモが、法316条の20第1項の証拠開示命令の対象(検察官が保管する証拠)に含まれるか。また、供述の信用性を争う場合の関連性・必要性が認められるか。
規範
刑事訴訟法316条の20第1項に基づく証拠開示命令の対象となる「検察官が保管している証拠」には、検察官が現実には所持していなくても、捜査の過程で公務員が職務上作成・保管し、検察官が入手容易なものも含まれる。その開示の可否は、被告人側の主張との関連性、開示の必要性、及び開示による弊害の程度を総合的に考慮して判断する。
重要事実
被告人は強盗致傷罪を否認。公判前整理手続中、証人Aが警察官Bによる取調べ段階では述べていなかった「被告人の自白」を検察官に対し供述した(新規供述)。弁護人はAの新規供述の信用性を争い、Bが私費で購入したノートに取調べ経過等を記した「本件メモ」の開示を請求した。本件メモはBが職務執行のため作成し、転勤後も自宅や異動先の机に保管していたものである。
事件番号: 平成19(し)424 / 裁判年月日: 平成19年12月25日 / 結論: 棄却
1 刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含む。 2 取調警察官が,犯罪捜査規範13条に基づき作成した備忘録であって,取調べの…
あてはめ
本件メモは、Bが警察官としての職務執行のために作成した公的な性質を有する書面であり、職務上現に保管され、検察官が入手容易なものとして「検察官が保管する証拠」に該当する。また、Aの新規供述の信用性判断において、従前の取調べでの供述状況は極めて重要であり、弁護人の主張とメモの記載には一定の関連性がある。さらに、証拠価値の検討の余地を弁護人に与える必要性も肯定され、開示による特段の弊害も認められない。
結論
本件メモは証拠開示命令の対象となり、関連性・必要性も認められるため、開示を命じた原決定は正当である。
実務上の射程
取調べメモが刑事訴訟法上の証拠開示対象となることを明言した重要な判例。実務上は、検察官が未入手であっても警察が組織的に管理・保管している資料であれば、入手容易性を肯定して開示請求の対象とし得ること、および「供述の変遷」を理由とした関連性・必要性の主張が可能であることを示している。
事件番号: 令和6(し)761 / 裁判年月日: 令和6年11月15日 / 結論: その他
弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項)を棄却した決定の謄本が先に弁護人に送達され、その後に被告人本人に送達された場合において、弁護人が同決定に対して即時抗告をするときは、その提起期間は、同決定の謄本が被告人本人に送達された日から進行する。
事件番号: 平成20(し)30 / 裁判年月日: 平成20年6月24日 / 結論: 棄却
1 訴訟関係人のする刑事確定訴訟記録法に基づく保管記録の閲覧請求であっても,関係人の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされたなど,権利の濫用に当たる場合は許されない。 2 訴訟関係人がした関係者の身上,経歴等プライバシーに関する部分についての閲覧請求が,当該関係者の名誉又は生活の平穏を害する行為をする目的でされ…
事件番号: 昭和58(し)72 / 裁判年月日: 昭和58年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官の手持証拠について開示命令をしない旨の決定は、訴訟手続に関し判決前にした処分に当たり、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」には該当しない。 第1 事案の概要:本件は、被告人側が検察官に対し証拠開示を求めたところ、裁判所が当該検察官手持証拠に…
事件番号: 平成23(し)286 / 裁判年月日: 平成23年8月31日 / 結論: 棄却
弁護人に対し証拠開示することを命じる旨求めた弁護人からの証拠開示命令請求(刑訴法316条の26第1項)を棄却する決定については,即時抗告の提起期間は,同決定の謄本が弁護人に送達された日から進行する。