火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した本件書面(判文参照)については,刑訴法321条3項所定の書面の作成主体が「検察官,検察事務官又は司法警察職員」と規定されていること及びその趣旨に照らし同項の準用はできないが,同条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有する。
火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面について,刑訴法321条3項は準用できないが,同条4項の書面に準じて同項により証拠能力が認められるとされた事例
刑訴法321条3項,刑訴法321条4項
判旨
私人が作成した燃焼実験報告書について、刑事訴訟法321条3項の準用は否定されるが、作成者が特別の学識経験を有し作成の真正が立証されている場合には、同法321条4項の書面に準ずるものとして証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
私人が作成した実験報告書について、刑事訴訟法321条3項(検証調書等)を準用して証拠能力を認めることができるか。また、同条4項(鑑定書等)の準用の可否が問題となる。
規範
刑事訴訟法321条3項は作成主体を「検察官、検察事務官又は司法警察職員」と規定しており、私人作成の書面に同項を準用することはできない。もっとも、作成者が専門的知識に基づき実験及び考察を行い、その作成の真正が立証されている場合には、鑑定人の作成した鑑定書に準ずるものとして、同法321条4項を準用して証拠能力を認めることができる。
重要事実
非現住建造物等放火被告事件において、火災原因に関する「燃焼実験報告書」の抄本が証拠請求された。作成者は私人であるが、消防士として15年の勤務経験があり、通算約20年にわたり火災原因の調査・判定に携わってきた専門家であった。福岡県消防学校の依頼を受け、多数の調査実績がある会社において実験を行い、その考察結果を報告したものである。第1審は刑訴法321条3項を準用して証拠能力を認めたが、上告審でその解釈が争点となった。
事件番号: 平成17(あ)378 / 裁判年月日: 平成18年11月7日 / 結論: 棄却
刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。
あてはめ
本件報告書抄本は、作成主体が捜査機関ではないため、文言上321条3項の準用は認められない。しかし、作成者は火災原因の調査・判定に関して特別の学識経験を有する者であり、本件報告書はかかる学識経験に基づいて行われた実験及び考察の結果である。さらに、作成者の証人尋問を通じて作成の真正も立証されている。したがって、本件報告書は実質的に鑑定書としての性格を有するものといえる。
結論
本件報告書は刑事訴訟法321条3項を準用することはできないが、同条4項の書面に準ずるものとして証拠能力が認められる。
実務上の射程
専門的な知見を持つ私人が捜査協力として作成した実験結果や調査報告書(いわゆる「私鑑定」)の証拠能力を検討する際のリーディングケースである。3項(検証)と4項(鑑定)の作成主体の違いに注目し、専門性の有無によって4項準用の可否を論じる必要がある。
事件番号: 昭和26(あ)2591 / 裁判年月日: 昭和28年7月7日 / 結論: 棄却
一 検事に対する相被告人の供述調書は、被告人の関係においては、刑訴第三二一条第一項第二号の書面としての証拠能力を有する。 二 所論昭和二五年三月一五日言渡の札幌高裁判決(当裁判所事務総局刑事局昭和二五年九月発行高等裁判所刑事判決特報六号一八五頁以下参照)及び昭和二五年七月一〇日言渡の同裁判所判決(高等裁判所判例集三巻二…
事件番号: 昭和53(あ)796 / 裁判年月日: 昭和53年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法328条に基づき提出された証拠は、犯罪事実を認定するための実質証拠として用いることはできず、これを証拠として採用していない以上、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被告人は放火事件について、捜査段階での自白や証拠の採用方法に関し、憲法違反や判例違反を主張して上告した。特に、刑訴法328…
事件番号: 昭和43(あ)2552 / 裁判年月日: 昭和44年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者に共同正犯としての刑責を負わせることは、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる共謀共同正犯における共謀に参加した事実が認められるものの、当該犯罪の実行行為自体には直接関与していなかっ…
事件番号: 昭和55(あ)578 / 裁判年月日: 昭和55年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の取調べ過程において、供述の任意性に影響を及ぼすような違法または不当な事由が認められない場合には、当該自白調書の証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人の供述調書(自白調書)の証拠能力が争点となった事案である。弁護人は、憲法33条、36条、38条1項・2項に違反するような違法・不当…