刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られる。
刑訴法328条により許容される証拠
刑訴法328条
判旨
供述者が署名押印を拒絶した供述書について、刑訴法321条1項2号後段を準用して証拠能力を認めることはできない。
問題の所在(論点)
供述者の署名押印を欠く書面について、刑訴法321条1項2号後段等の伝聞例外規定を適用または準用して証拠能力を認めることができるか。
規範
刑事訴訟法321条1項各号は、伝聞証拠の証拠能力を認める要件として「供述者の署名又は押印」を要求している。これは供述の任意性と正確性を担保するための不可欠な手続的要件である。したがって、供述者が署名押印を拒絶した場合には、同条項の定める書面としての形式的要件を欠くことになり、同条1項2号後段等の規定を準用して証拠能力を認める余地はないと解すべきである。
重要事実
被告人以外の者が、捜査官に対し特定の事実について供述を行い、捜査官がその内容を聴き取って書面(いわゆる供述調書)を作成した。しかし、当該供述者は、完成した書面の内容を確認したものの、何らかの理由により当該書面への署名および押印を拒絶した。その後、公判段階において当該供述者が前の供述と相反するか、あるいは実質的に異なる供述をしたため、検察官が当該署名押印のない書面を証拠として請求した。
事件番号: 平成19(あ)2207 / 裁判年月日: 平成20年8月27日 / 結論: 棄却
火災原因の調査,判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した本件書面(判文参照)については,刑訴法321条3項所定の書面の作成主体が「検察官,検察事務官又は司法警察職員」と規定されていること及びその趣旨に照らし同項の準用はできないが,同条4項の書面に準ずるものとして同項により証拠能力を有…
あてはめ
本件書面は、供述者の供述を録取したものであるが、同人の署名押印が欠落している。刑訴法が署名押印を要求しているのは、供述内容が供述者の真意に基づき正確に記録されたことを本人が確認したことを公証させるためである。本件のように供述者が署名押印を拒絶している以上、書面の内容の真正が担保されているとはいえず、同法321条が定める厳格な例外要件を満たさない。また、署名押印がない以上、同条1項2号の「書面」そのものに当たらないというべきであり、同条を類推・準用して証拠能力を肯定することは法の趣旨を潜脱することになる。
結論
本件書面は刑訴法321条1項各号に定める要件を欠くため、証拠能力は認められない。これを証拠として採用した原判決には法令違反がある。
実務上の射程
司法試験の答案作成においては、伝聞例外の形式的要件(321条各号柱書の署名押印)の重要性を指摘する際に引用すべき判例である。特信情況等の実質的要件を検討する前に、まず形式的要件の欠如によって証拠能力を否定する論理構成として有用である。
事件番号: 昭和27(あ)1700 / 裁判年月日: 昭和27年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条2項及び刑訴法319条1項に基づく自白の任意性については、強制、拷問、脅迫等によりなされたものであることを認めるに足りる証跡が存在しない場合には否定されない。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察員が作成した第2回及び第3回の各供述調書における自白について、強制、拷問、脅迫によりなされた…
事件番号: 昭和41(あ)1478 / 裁判年月日: 昭和42年3月17日 / 結論: 棄却
本件放火の手段方法に関する第一審判決の判示につき、理由不備等の違法に当らないとした原判決の判断に誤があるとは認められない。 (注、第一審判決の判示) 「……右生石灰に水を注入して之を発熱させ、前記羽目板、木箱、ガソリン類等の可燃物に引火させる方法によつたものか或はその他何等かの手段方法により、同家屋に火を放ち……」
事件番号: 昭和53(あ)796 / 裁判年月日: 昭和53年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法328条に基づき提出された証拠は、犯罪事実を認定するための実質証拠として用いることはできず、これを証拠として採用していない以上、判決に違法はない。 第1 事案の概要:被告人は放火事件について、捜査段階での自白や証拠の採用方法に関し、憲法違反や判例違反を主張して上告した。特に、刑訴法328…