採石権侵害の不法行為を理由とするXのYに対する損害賠償請求事件において,Xが採石権を有する土地でYが採石したとの事実が認定されており,これによればXに損害が発生したことは明らかである以上,上記採石行為の後,Yが当該土地につき採石権を取得して適法に採石したため,Yの違法な行為による採石量と適法な行為による採石量とを明確に区別することができず,損害額の立証が極めて困難であったとしても,民訴法248条により,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて相当な損害額が認定されなければならず,損害額を算定することができないとしてXの請求を棄却した原審の判断には,違法がある。
採石権侵害の不法行為を理由とする損害賠償請求事件において,損害の発生を前提としながら,民訴法248条の適用について考慮することなく,損害額を算定することができないとして請求を棄却した原審の判断に違法があるとされた事例
民訴法248条,民法709条
判旨
法人の代表者が、他者の権利を侵害することを知りながら従業員に侵害行為を指示した場合、法人の不法行為責任とは別に、代表者個人も不法行為に基づく損害賠償責任を負う。また、損害の発生が認められる以上、その額の立証が極めて困難な場合であっても、裁判所は民事訴訟法248条に基づき相当な損害額を認定しなければならない。
問題の所在(論点)
1.法人の代表者が業務として行った権利侵害行為につき、当該代表者個人が不法行為責任を負うか。 2.損害の発生は明らかだが、具体的な損害額の算出が困難な場合に、算定不能として請求を棄却できるか。
規範
1.法人の代表者が、他者の権利を侵害することを知りながら、代表者として従業員等に対し侵害行為を指示してこれを行わせた場合、当該代表者個人に不法行為(民法709条)が成立する。法人の損害賠償責任は、代表者個人の責任を免れさせるものではない。 2.不法行為に基づく損害が発生したことが認められる場合において、損害額を立証することが当該事実の性質上極めて困難なときは、裁判所は、民事訴訟法248条に基づき、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定すべきである。
重要事実
採石業者である上告人は、本件土地1及び2について採石権を有していた。被上告会社(法人)の代表取締役Yは、上告人が採石権を有することを知りながら、従業員に指示して本件各土地の岩石を採石させた(本件和解前後の行為を含む)。上告人は、被上告会社及び代表者Yに対し連帯して損害賠償を求めた。原審は、会社に対する請求は一部認容したが、Y個人については「会社の代表者としての指示にすぎない」として責任を否定した。また本件土地1の侵害については、和解後の自己の採石量と区別できず損害額が算定不能であるとして、請求を棄却した。
あてはめ
1.代表者Yは、本件各土地における採石行為が上告人の採石権を侵害することを知りながら、あえて従業員に指示を出して実行させている。この場合、Yに不法行為が成立することは明らかであり、会社が責任を負うからといってYの責任が免除される法的根拠はない。 2.本件土地1についても、和解前に被上告会社が採石した事実は認められ、上告人に損害が発生したことは明らかである。その後の採石量と区別が困難であっても、裁判所は民訴法248条の規定を適用し、諸般の事情から相当な損害額を認定する法的義務を負う。算定不能を理由に棄却することは許されない。
結論
1.代表者Yは、自己の指示による権利侵害について個人としても不法行為責任を負う。 2.損害額の立証が困難な場合でも、民訴法248条により相当な損害額を認定すべきである。これらを否定した原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
法人の機関が職務として行った行為であっても、個人の不法行為の要件を満たす限り、会社(民法44条等)と個人(709条)の責任は併存する。答案上は、法人の責任を論じる際、代表者個人についても悪意・重過失(会社法429条1項)だけでなく、一般不法行為の成否を検討する際の有力な論拠となる。また、実務上、額の算定が困難な事例での救済規定(民訴法248条)の積極活用を促す射程を持つ。
事件番号: 昭和45(オ)399 / 裁判年月日: 昭和47年9月21日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が、会社において代金を支払う資力がないものである事情を知りながら、会社の被用者をして会社のため第三者から商品を買い受けさせ、右第三者にその代金相当額の損害を与えた場合には、右代表取締役は、右第三者に対し、不法行為による損害賠償責任を負うものと解すべきである。 (意見がある)