自家用自動車総合保険契約の被保険者が保険会社に対し車両保険金の支払を請求し,その保険契約に適用される約款に基づく履行期が到来した場合に,保険会社から被保険者に対し,その請求についてはなお調査中であり,調査に協力を求める旨記載した書面(協力依頼書)が送付され,その後,保険会社から被保険者に対し,調査への協力には感謝するが,請求には応じられない旨記載した書面(免責通知書)が送付されたなど判示の事実関係の下では,協力依頼書の送付行為は,上記約款に基づく履行期について調査結果が出るまで延期することを求めるものであり,被保険者は,調査に協力することにより,これに応じたものであって,上記保険金に係る請求権の履行期は,合意によって,免責通知書が被保険者に到達した日まで延期されたというべきであり,その消滅時効の起算点はその翌日となる。
保険契約に適用される約款に基づく履行期が合意によって延期されたと認められ,保険金請求権の消滅時効の起算点がその翌日となるとされた事例
商法663条,民法166条1項
判旨
消滅時効の起算点となる「権利を行使することができる時」とは、権利行使の法律上の障害が解消された時を指すが、債券等の盗難被害による免責証券の無効手続においては、公示催告期間の経過による除権決定の確定を待つことなく、被害届受理後に金融機関が支払停止の措置を講じ、債権者がこれを確認できる「支払停止通知の到達日」を基準に消滅時効が進行すると解すべきである。
問題の所在(論点)
記名式証券の盗難に伴う預金債権について、消滅時効の起算点となる「権利を行使することができる時(民法166条1項)」は、除権決定が確定した時か、あるいは支払停止通知が債権者に到達した時か。
規範
消滅時効の起算点(民法166条1項)である「権利を行使することができる時」とは、権利行使を妨げる法律上の障害が消滅した時をいう。記名式証券が盗難等により紛失された場合、原則として証券の所持が権利行使の条件となるが、証券の無効手続が進行し、金融機関が支払を拒絶する「支払停止」の措置を講じた後は、事後的・実質的な権利の確定が可能となる。したがって、権利行使の客観的な可能性が生じたといえる時点(通常は支払停止通知の到達時)をもって時効が進行すると解するのが相当である。
重要事実
本件では、記名式定期預金証券(ランドクルーザー)が盗難に遭った。預金者(原告)は警察に被害届を出し、金融機関に対し支払停止を求めた。これを受け、金融機関は「支払停止措置」を講じ、原告に対して平成11年11月11日付で「支払停止通知書」を送付した。同通知書は翌12日に原告に到達した。原告はその後、公示催告を経て除権決定を得たが、金融機関は「通知書の到達から10年(当時の消滅時効期間)」が経過したとして消滅時効を主張した。
あてはめ
原告は、証券を喪失している間は「法律上の障害」があるため除権決定の確定まで時効は進行しないと主張する。しかし、本件の支払停止通知書には「届出内容を検討した結果、支払を停止した」旨が明記されており、この時点で金融機関側は証券の非所持を理由とする支払拒絶の抗弁を(調査・確認のために)一旦放棄し、債権の存在を前提とした手続に移行している。通知書が到達した平成11年11月12日の時点で、原告にとって権利行使を妨げる実質的な障害は解消されており、客観的に権利行使が可能な状態になったといえる。そこから10年が経過した時点(平成21年11月12日)で時効は完成する。
結論
本件預金債権の消滅時効は、支払停止通知が到達した平成11年11月12日から進行し、10年の経過により消滅した。したがって、金融機関側の消滅時効の主張は認められる。
実務上の射程
判決文からは不明(ただし、公示催告手続等の定型的な無効手続が存在する場合の、預金債権一般に適用される判断枠組みと考えられる)。
事件番号: 平成17(受)1519 / 裁判年月日: 平成19年6月7日 / 結論: 破棄自判
いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。